ODA70周年を機に対中供与の大失態の反省を その5(最終回) 日本の首を絞める中国軍事力に寄与
Japan In-depth / 2024年3月30日 11時0分
2010年にワシントンの「プロジェクト2049研究所」(所長・ランディ・シュライバー元国防次官補)により作成された「中国の核弾頭の貯蔵と操作システム」と題する報告書だった。
同報告書によると、中国は戦略核弾頭約250発などの大部分を秦嶺山脈の太白山を中心とする地下トンネル網の管理基地「二十二基地」に保管している。
その一方、中国は核ミサイルの発射基地として瀋陽、洛陽、黄山、西寧、懐化、昆明の6基地を機能させ、情勢に合わせて「二十二基地」からの核弾頭を常時、出入りさせている。この頻繁な移動には鉄道を使うことが多いのだという。
夜間、特別な列車に核弾頭を搭載し、一般にも使われる鉄道で走らせつづけることで、防御の弱いミサイル発射基地におく核弾頭を最小限にして、万が一、攻撃を受けた場合でも核反撃の能力保持を確実にするためだ、と同報告書は伝えていた。
鉄道とか汽車は中国では核兵器の防御や配備にも使われるという現実の一端だといえよう。だから日本からの対中ODAによる鉄道建設というのはきわめて軍事の色彩も含む事業なのである。
こうみてくると日本のODAが中国の軍事能力の強化を助けてしまったことは否定のしようがないといえよう。
その中国はいまや増強された軍事力を日本に対して尖閣諸島の奪取のために、使おうとする。あるいは日米同盟の弱化や破棄を狙ってアメリカへの抑止力に使う。中国側の要求に日本を従わせるために使おうとする。
日本からすれば自国を抑えつけ、首を絞めてくる武器としての軍事力を増強させるために、40年もの間、一生懸命に中国に対して貴重な国費からのODAを贈りつづけたことになってしまったのだ。
だから対中ODAが日本になにをもたらしたのかという総決算を考えるとき、どうしてもレーニンの「資本家は自分の首を絞めるロープまで売る」という言葉を思い出してしまうのだ。もっとも資本家は自分たちを殺すロープを少なくとも代金を取って、売ったのだが、日本の場合、自国を破壊しうる軍事力の重要部分を中国に贈呈したこととなる。だからいま70周年を記念してこんごのODAのあり方を考えるとき、この中国での失敗は再検証し、反省されねばならない貴重な歴史であろう。
▲写真 「ODA幻想 対中国政策の大失態」著:古森義久(海竜社)出典:amazon
(終わり。その1、その2、その3、その4)
トップ写真:中国瀋陽市、ハルビン市、大連市にある光ファイバー通信施設。蘇家屯区の操車場(2005年9月)出典:Photo by Rail Photo/Construction Photography/Avalon/Getty Image
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