「競馬は人生の比喩ではない。人生が競馬の比喩である」 文人シリーズ第3回「アフォリズム(比喩)の天才 寺山修司」
Japan In-depth / 2024年4月12日 14時31分
斎藤一九馬(編集者・ノンフィクションライター)
「斎藤一九馬のおんまさんに魅せられて55年」
【まとめ】
・寺山修司は競馬をこよなく愛し、いくつものアフォリズム(警句)を残している。
・曰く、「さまざまな馬の性格は、そのまま、人間によって作り出された「作品」である」。
・「『人生が競馬の比喩だ』と思っている」、とも。
詩人であり歌人、小説家であり劇作家、あるいは前衛劇団の主宰者と多芸・多能を誇った寺山修司(1935~1983年)は競馬をこよなく愛し、いくつものしびれるアフォリズム(警句)を残している。
「私たちは一頭のサラブレッドを見るとき、それが『ただの一頭』ではなく、サラブレッドの歴史、その血の宿命と葛藤、そして自然に挑んできた人工の営為の結果であることを知るのである。長距離が得意な馬、一瞬のスピードをもった馬、内気な馬、好色な馬、視力の弱い馬、大食いの馬、さまざまな馬の性格は、そのまま、人間によって作り出された「作品」であることがわかる。」(『山河ありき』新書館)
サラブレッドが人間によってつくられた作品なら、われわれ人間の創造主は、いわずもがな、その親たちである。さらには親たちが連なる家系である。
山口瞳によって競馬にいざなわれ、寺山修司のアフォリズムに酔って私は道を踏み誤った
――と思っていたのだが、どっこいこれは、血の宿命でもあったようだ。
今から20年ほど前、父親の葬儀の席でのことである。
私の父親はまじめ一方の男で、パチンコすらやったことがない。もちろん競馬なんて論外だ。競馬場に連れて行ってもらったことなど一度もない。おふくろも同じで、賭け事にはまったく縁のない家系だった。それなのに、私がどうしてこんなに競馬にのめり込むようになったのか、自分でも不思議に思うことがあった。
葬儀のあと、身内だけで父親の思い出話になった。そのとき父親の一番上の姉、私の大伯母が私に向かってなにげなくこう言った。
「お前の親父、良一はクソがつくほどマジメで堅い男だったけど、母親がとんでもない博奕好きな女でねえ」
聞いて、私はのけぞった。伯母の言う「母」というのは父の母、すなわち私の祖母にあたる。
「亭主を早くになくして、さびしかったんだろうねえ。夜の食事を済ませると、赤ん坊の良一を背中におんぶして、いそいそと近くの温泉場にある賭場へ出かけるんだよ。花札だか、丁半博奕だか知らないけどさ。このあたりじゃ有名な話で、私らはずいぶん肩身の狭い思いをしたもんだ」
-
-
- 1
- 2
-
この記事に関連するニュース
-
【七夕賞】リフレーミングは現役で希少なキングヘイロー産駒 陣営「うまく展開がはまればやれるかも」
スポーツ報知 / 2024年7月1日 15時21分
-
【福島5R・2歳新馬】松永幹厩舎ゆかり血統デルアヴァーが快勝 三浦皇成騎手「伸びは素晴らしい」
スポーツ報知 / 2024年6月30日 13時25分
-
欧州競馬に現れた怪物2歳牝馬 他馬子供扱い、アスコット衝撃の9馬身差Vで「来年の英クラシック最有力」
THE ANSWER / 2024年6月24日 7時13分
-
「敵なし」ナリタブライアン1994年皐月賞の舞台裏 衝撃の三冠達成から30年、関係者が語ったこと
東洋経済オンライン / 2024年6月9日 13時30分
-
中央競馬「2歳戦」がスタート!東京・京都に出走する「注目すべき4頭」を徹底解説
日刊SPA! / 2024年6月7日 15時30分
ランキング
-
1大分県宇佐市の強盗殺人、死刑判決の被告側が即日控訴…裁判長「被告が犯人と優に認められる」
読売新聞 / 2024年7月2日 22時9分
-
2マンションから転落疑いの女児死亡 意識不明で救急搬送 札幌
毎日新聞 / 2024年7月2日 21時19分
-
3殺人事件発端は「ラーメンを食べる画像」なぜ…きょう勾留期限・旭川市女子高校生橋から転落殺人
STVニュース北海道 / 2024年7月3日 6時36分
-
4かすむ「ポスト岸田」上川外相 米兵事件巡る批判で「洋平さんと同じ道」
カナロコ by 神奈川新聞 / 2024年7月2日 22時17分
-
5なぜ日本のメディアでは小池百合子都知事の「荒唐無稽な噓」がまかり通るか《カイロ大「1年目は落第」なのに首席卒業》
文春オンライン / 2024年7月3日 6時0分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)