国際情勢からの日本の憲法改正の必要性(下)アメリカが切望する日本の改憲
Japan In-depth / 2024年5月1日 17時0分
他方、アメリカがアジア太平洋地域で結ぶ他の二国間安保条約はみな日米安保条約とは異なる。韓国、オーストラリア、フィリピン、ニュージーランドなどとのアメリカの条約はみなアメリカが太平洋地域で第三国の攻撃を受けた場合に同盟相手国もアメリカを助けて共同の軍事行動を取ることを義務づけているのだ。だが日本の場合のアメリカとの共同防衛の地域は日本の領土、領海だけなのである。なんという相違だろうか。この日本の特殊性はもちろん憲法のせいなのだ。
トランプ氏の日本批判にはこんな背景があったのである。ただしトランプ氏は実際に大統領になると、日本への非難は止め、もっぱら目前の日米同盟を強化する施策を進めた。中国の脅威への日米団結がまず不可欠とする判断からだったといえる。
今回の大統領選でもトランプ氏はたまに日本の自動車市場がアメリカ車に対して十分に開放されていないという批判を述べる。その際に日本の防衛面でのアメリカへの依存にもちらりと言及する。その背景には年来の共和党層の日本の防衛強化、そしてその強化を抑える日本憲法の改正への求めがあるからだといえよう。
一方、民主党側は現職のバイデン大統領が選挙キャンペーンで日本に触れることはまずない。だが現政権は実際の政策で日本が年来の軍事忌避を捨て、アメリカとの同盟強化だけでなく、他の有志諸国との集団的防衛へ進むことをすでに促してきた。台湾有事への日本の関与への期待はその筆頭例だろう。
アメリカ側には日本が憲法を改正して日米同盟を双務的に、普通の同盟にすることを望む意見は民主、共和両党共通して、もう30年も存在してきた。
私の知る範囲で米側で初めて公式に日本の憲法の改正を提唱したのは1992年6月、ヘリテージ財団だった。同財団は「日本の民族精神の再形成」と題する報告書で日本国民は米側から押しつけられた憲法により現実の世界での力の行使、軍事の役割から目をそらし、架空の世界に入っている、と厳しく指摘していた。
それ以来、米側で日米同盟をより平等、より公平にするために日本は憲法を改正すべきだとする提言や勧告は数えきれないほど出てきた。
「日本は大国にふさわしい役割を果たすために憲法を改正すべきだ」(2007年4月、トム・ラントス下院外交委員長の安倍晋三首相への発言)
「日本の憲法9条はより緊密な日米防衛協力には障害となる」(2010年10月、議会調査局の日米関係報告書)
「日本はアメリカに尖閣諸島を防衛してほしいなら、まず憲法を改正して有事のアメリカ支援を可能にするべきだ」(2017年3月、下院外交委員会での民主党ブラッド・シャーマン議員の発言)
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