全米初、マンハッタンに「渋滞税」導入
Japan In-depth / 2024年5月5日 17時4分
2008年に今回のプログラムの原型となるプランが提示され、以来17年もの間、検討に検討を重ね、議論につぐ議論も尽くされた、とのことで、ようやく実現にこぎつけたのが、この「渋滞税(正式名称:The Central Business District (CBD) Tolling Program)」プログラムだ。
「17年もかけたので、議論は尽くされた」というのがNY当局の言い分だが、議論は尽くされたはずなのに、実施のドタンバの今になっていくつかの訴訟が起こされている。
ガマンならないのが、隣りのニュージャージー(NJ)州である。
NJ住民はマンハッタンに通勤している人も多い。それらの人びとは、マンハッタンへの通勤に、高額なトンネル、橋の通行料(11.75ドル≒1,800円)を「毎日」払っており、ただでさえ高い料金に15ドルもの「マンハッタン入場料金が毎日」加わるなど言語道断、というわけだ。
しかし、NY当局は6月の実施に向け、5億5000万ドルかけて、市内100か所以上の「関所」に検知器をすでに設置済みだ。
▲写真 すでに設置済みの「関所」の自動検知センサー(写真上部)。設置されたのは市内100か所以上 Ⓒ柏原雅弘
NJの反発を見て、ニューヨーク州は、年間10億ドルの通行料による収益(NJは34億ドル、との主張)の一部を、NJ州のインフラ整備のために還元し、料金の割引もする、という懐柔策に出た。
ニューヨーク市民はどうみているのであろうか。
「関所」の近辺に住む住人は、「関所」手前での駐車違反や、深夜割引が始まる時間を狙っての多数の待ち車両による渋滞が起きるのではないか、と不安を訴える人たちもいるが、区域内に住む住民全体からは、実施に賛成との意見が多いという。しかし、区域外の住民の6割は「いまだに導入に納得がいっていない」という調査もある。
それとは別に、少数ながら「車依存社会から脱却する良いチャンス」と導入に好意的な意見も見られる。
アメリカはどこへ行ってもクルマがないと生活できない地域がほとんどであるが、ニューヨークは全米でも珍しい、徒歩も含めた車以外の交通手段で移動ができる都市だ。
私生活において、出来るだけクルマを使わない、というまちづくりへの挑戦は意味があるかもしれない。実際、私も過去30年、車を所有したことがないが、市内での移動で不便に思ったことはほぼない。
やはり、マンハッタンは、全米で一番、人を歩かせる街だ。
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