プーチンの理性に期待する 「核のない世界」を諦めない 最終回
Japan In-depth / 2024年5月6日 23時0分
逆のケースとして、イスラエルなど、核武装していると衆目が一致している国だが(公式には、肯定も否定もしていない)、周辺のアラブ諸国、近年ではイスラム武装勢力から、絶え間なく、と言って過言ではないくらい、幾度も武力攻撃を受けてきた。
今次のガザ地区の紛争に際して、米共和党のティム・ウォルバーグ下院議員が、
「紛争を手っ取り早く終わらせるには、広島や長崎のような爆弾が効果的」
などと発言し、炎上した。当人は「もののたとえ」だと弁明しているが、こうした発想が今も残っている、という事実は注目に値するだろう。もちろん悪い意味で。
その一方では、核兵器を開発していながら、自発的に放棄した国もある。
南アフリカ共和国だ。
この国はかねてから、核兵器と親和性があった。
世界屈指のウラン産出国であり、本シリーズで主題のひとつともなった、映画『オッペンハイマー』では、国名こそ明かされないものの、原爆開発のために八方手を尽くしてウランを集めるシーンがある。そして歴史をひもとけば、くだんのウランの一部は南アフリカが供給した。
そして、こちらもご案内の通り、1970年代以降、同国のアパルトヘイト(人種隔離政策)に対する国際的な批判が高まったことから、西側先進国の大半が兵器輸出を禁じた上、アンゴラ、モザンビークなど周辺諸国にはソ連邦の影がちらつくようになった。
こうした背景から、核武装に踏み切ったわけだが、冷戦終結により、大きく状況が変ったのである。1989年に就任したデ・クラーク大統領は、アパルトヘイトの撤廃も示唆しつつ、6発あったという核弾頭を全て廃棄し、NPT(核拡散防止条約)に加盟することで、国際社会に復帰する道筋を付けようとしたのである。そして実際、同国は1991年にNPTを批准するに至った。
核兵器を抱えて国際社会から孤立するより、むしろ協調する道を選んだ方が、安全保障上もはるかに有益である。
世界中の政治権力者がこの常識を共有できるようにならない限り、人類が核の恐怖から解放される日は、すぐに訪れるものでもないであろう。
我々としては、前述のような「紛争解決には原爆投下が手っ取り早い」などと口走る輩を政治の世界に留めてはおかない、という決意を新たにし、実行に移すことから始めたいものだ。
トップ写真:救世主キリスト大聖堂での復活祭の礼拝に出席したプーチン露大統領(2024年5月5日 ロシア・モスクワ)出典:Contributor/Getty Images
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