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〝法の範囲内〟であるはずが「法の強化」招く 波紋大きいつばさの党の選挙妨害事件

Japan In-depth / 2024年5月17日 11時0分

日本社会党(現社会民主党)委員長(当時)の浅沼稲次郎が演説のさなかに刺殺された討論会といえば、年配の読者なら、「あのときか」と思い出すだろう。





都選管、NHKなどが共催、10日余後に迫った衆院の解散、翌月の総選挙のいわば前哨戦の位置づけだった。





演壇に立ったのは、浅沼のほか、首相で自民党総裁の池田勇人(当時)、社会党から分派した民主社会党委員長(同)、西尾末広の3氏。





会場には右翼関係者らが多数押しかけ、西尾には「裏切者」、浅沼には「中国の手先」などの罵声を浴びせ、ビラが大量にまかれるなど騒然、緊迫していた。





2番目に立った浅沼は、「選挙のさいは国民に評判の悪いものは全部捨てておいて・・」と池田内閣批判のくだりに差しかかった時、壇上に駆け上った男が浅沼の胸部を鋭利な刃物で刺した。浅沼は病院に担ぎ込まれた時にはすでに息を引き取っていた。





犯人は17歳の右翼少年で、池田首相、そのSP、多くの聴衆の面前、テレビカメラの前での凶行だった。 





誠実で飾り気のない人柄、魁偉な容貌と実行力から「人間機関車」の愛称で、保守層からも人気のあった浅沼の死は、大きな衝撃をもたらした





当日の警備は「政治演説の会場で警官が必要以上に目立つのは好ましくない。警備は原則として主催者が行い、やむを得ないものに限って警察がこれにあたる」という控えめな方針だったという(沢木耕太郎、『テロルの決算』)。





所轄、丸の内署は60人の警察官の配置を主張したが、選管との間で30人で妥協が図られた。ヤジ、ビラまきを警官が制止した一瞬のスキをを突かれて凶行が行われた。





制服警官の数がより多かったならと、悔やまれたが、選挙に向けた論争の場への当局の介入に関係者が慎重になった結果だったろう。





筆者の個人的な想像だが、警察当局はこの年6月の安保反対デモの警備で、政治的色彩の強い問題への介入に臆病になっていたのではないか。





もっと憶測を巡らせば、戦後まだ15年というこの時期は、憲兵、旧特高警察による弾圧の記憶が生々しく残っていただけに、警察にも萎縮があったのかもしれない。





■ 自由妨害罪強化論が台頭





今回の取り締まりに話を戻すと、期間中の強制捜査が見送ら、時間を経てから着手された事実からも、政治的な中立が求められる警察当局にとっては、難しい判断だったことがうかがえる。





今回の事態を受けて、与野党の間ではすでに公選法225条の「選挙の自由妨害罪」をより明確にし、罰則を強化すべきという議論がなされている。





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