金正恩の「先代超え作戦」は成功するのか?(上)
Japan In-depth / 2024年5月28日 22時52分
朴斗鎮(コリア国際研究所所長)
【まとめ】
・「金正恩権威格上げ作業」が急ピッチで進められている。
・金正恩には先代を超える「思想」や「革命歴史」がない。
・金正恩は北朝鮮の「後継者原則」を否定した。
北朝鮮金正恩体制の危機が深まる中で、金正恩総書記執権12年の今年に入って、「金正恩権威格上げ作業」が急ピッチで進められている。
金正恩は、「金日成・金正日の統一路線放棄」を皮切りに、金日成を「太陽」の座から降ろして自身が「主体の太陽」となり、父親金正日に与えられてきた「金正日朝鮮」を「金正恩朝鮮」に変えてしまった。金正恩を先代たちと同等か、それ以上の立場に押し上げることで、権威強化を図ろうとしているのである。
2024年4月11日付労働新聞社説は「敬愛する金正恩同志を高く奉じたわが党と国家、人民の偉業は必勝不敗だ」との社説を掲載し、金正恩執権12年がこれまでの北朝鮮歴史で最も成功的だったとし、「偉大な勝利の記念碑を建てた聖なる年代記」だと記した。
そして5月15日に行われた「前衛通り」の竣工式で、宣伝扇動部書紀の李日煥は「今日、光栄にもオボイ金正恩元帥の出席の下」と金日成に付けていた「オボイ(父母の表現)」との言葉を使い、金正恩を全人民が称えているかのごとく偶像化した。時を同じくして北朝鮮官営媒体は「親近なるオボイ」なる金正恩称賛の歌を大々的に広めた。
極めつけは5月21日、朝鮮労働党の幹部養成学校の竣工式に金正恩を迎え、校舎の外壁や教室に金正恩の肖像画を祖父の故・金日成と父の故・金正日の肖像画と同格に並べ掲げたことだ。金正恩と先代指導者の肖像画が並んだ場面が公開されたのは初めてである。
しかし、この大博打が、金正恩の思惑通り成功するかどうかはわからない。
1、先代を超える「思想」や「革命歴史」がない金正恩
金正恩を偉大な首領とするプロパガンダは、党8回大会以降進められてきたが、今後、金正恩を「北朝鮮の太陽」にするための、これまでの宣伝とは質を異にする「偉大性宣伝作業」が本格化すると思われる。
その作業はまず、「金正恩思想の捏造」と北朝鮮の歴史に「金正恩の偉大性」を加える歴史改ざんから始められると思われる。しかしこうしたプロパガンダを成功裏に行うには障害が多い。金正恩には金日成・金正日の偉大性を超える宣伝材料がないからだ。
まず金正恩には金日成・金正日を超えるそれなりのいわゆる「思想」というものがない。
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