米中関係はどこへ サタ―氏に聞く その2 米側の大規模な対中抑止策
Japan In-depth / 2024年5月31日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・バイデン政権や議会は多様で大規模な中国抑止政策をとっている。
・それらは、安全保障やインフラの力を強くする措置や、高度技術の発展を抑えるための措置など。
・さらに、中国の無法な膨張を抑える国際連帯を強めた。
——(古森義久) アメリカ側での対中抑止差の着手から6年ということですが、その具体的なスタートはまさに6年前の2018年10月の当時のトランプ政権のマイク・ペンス副大統領による対中新政策の主要演説でしたね。この時点でトランプ政権は公式にそれまでの長年の対中関与政策は失敗だったと宣言し、中国への警戒、抑止、対決という基本姿勢を明確にしたわけです。
さらにその前段階としてはオバマ政権時代の2014年ごろから中国が南シナ海のスプラットレー諸島をフィリピンなどとの領有権紛争が未解決なのに一方的に武力で占拠して、軍事基地を建設し始めた。だがオバマ政権はとくに防止策はとらなかった。そんな経緯がありますね。
ロバート・サター「そうです。その後、中国が多様な領域でのアメリカへの挑戦を露骨にし始めたわけです。
先に述べたようにアジアでの軍事バランスを変えようとする。経済面での不公正な方法で自国の利益を拡大し、アメリカ経済を侵食する。アメリカの高度技術を窃取する。国内に浸透して政治工作を図る。民主主義や法の支配を否定する自国の独裁政治モデルを他国へも広めようとする。ごく最近ではアメリカの経済インフラへのサイバー攻撃能力を高めています。
中国はこうした対米攻勢にかなりの成功をおさめてきました。アメリカ側ではこの攻勢を跳ね返せねばならないという意思がいまや超党派で強固になったのです。バイデン政権はいま実際の抑止策をとるとともに、中国側への抗議をも強めています。その結果、表面での米中間の対立や摩擦はますます激しくなっています。
バイデン政権はこれ以上の米中関係緊迫を防ぐためとして、中国側に対話を求めるのですが、中国側は本格的な対話の開始にまず前提条件をつけるのです。中国の王毅外相が一昨年、ブリンケン国務長官にその条件のリストを手渡しました。中国側からみての反中的な政府声明とか中国の対米投資を制限するような議会での法案とか、をすべて止めろという広範な要求でした。米側がとても実行できるような措置ではありません。だから米中政府間の関係改善のための本格的な交渉や対話は軍事対話を含めて、始まっていないのです」
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