サター氏に聞く その4(最終回)尖閣はどうなるか
Japan In-depth / 2024年6月1日 19時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・中国は台湾有事の米国介入を阻むため、年来の作戦を拡大強化し、新戦略を構築している。
・米国内では、ウクライナ支援を継続すると対中国軍備強化の資金が減るとの意見もある。
・中国が尖閣諸島奪取に出てきた場合、日本は反撃する軍事的な能力と意思を示しておくことが当面は現実的。
——(古森義久)しかし繰り返しですが、日本の政府や一部の与党政治家は、アメリカに向けて台湾有事への日本の軍事参加の見通しを決まっているかのように語っていますが、国内での政策や国会審議などでは、決定らしき論証はなにもありません。それでもなお中国の台湾攻撃という事態の想定は必要ですね。
ロバート・サタ―「米軍はその想定を怠りません。中国人民解放軍も台湾攻撃の具体的な戦力の強化は常に進めています。最近では中国軍は台湾有事に米軍の介入を阻む『接近阻止(A2)や領域拒否(AD)』という年来の作戦を拡大強化し、米側が『介入阻止』と呼ぶ新戦略を構築し始めたという情報があります。しかも西太平洋、東アジアでの中国軍と米軍の戦力は中国側がじわじわと優位へと向かっているのです。
危機はなお存在するのです。それに台湾やアメリカの動きによっては中国は台湾を攻撃せざるをえないという展開もありうるのです。極端な例ですが、台湾が独立の方針を表明する、あるいは中国に対して反抗
を露わにした政治姿勢をとる。アメリカが台湾との新たな防衛協定を結ぼうとする。あまり現実的ではないとしてもこんなシナリオがありえます。
台湾はアメリカにとって超重要です。中国の占拠を許すことはできない。台湾の軍事や戦略面だけでなく、経済などでの重要性は欧州諸国も認識するようになりました。当面はその国際的な抑止を強めていくことです。もし台湾を攻撃すれば中国自身にとってこんな膨大な被害や損失が起きるのだ、という見通しを示す抑止です。」
——(古森義久)サタ―さんは先にウクライナ問題と中国問題との連結を説明してくれたけれど、アメリカ議会では共和党を主体にウクライナへの支援を増やすと、中国への抑止のための予算が減ってしまうという意見がありますね。
ロバート・サター「共和党保守派の間ではバイデン政権の対ウクライナ政策への非難もこめて、このまま無制限にウクライナへの支援を続けていても、明確な目標がみえない、という意見があります。さらにその種の意見はウクライナへの軍事支援を制限なしに継続すると、中国に対する軍備強化の資金が減るという主張をも含んでいます。
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