アジアでの米軍の弱点とは
Japan In-depth / 2024年6月4日 11時0分
・中国軍の近代化の主柱は殺傷力と命中度のきわめて高い弾道、巡航ミサイルの大幅増強による遠隔地への戦力投入能力の強化と、C4IS(指揮、統制、通信、コンピューター、諜報、監視、偵察を統合する軍事司令機能)の画期的な増強である。そしてその全体の兵器が西太平洋に前方展開する米軍を標的としている。
・中国軍は台湾攻撃や東シナ海、南シナ海での軍事行動に米軍が介入することを防ぐ戦略としてA2/AD(接近阻止・領域拒否)を進めてきた。中国側はその戦略を「反干渉」と呼んできた。だが最近ではその軍事態勢をさらに強力かつ大規模とし、「介入阻止」と呼ぶべき戦略を打ち出してきた。
この公聴会ではこうした基本認識の下に3部に分かれたパネルで各3人の民間の専門家たちが証言した。
大手防衛研究機関のランド研究所のクリスティナ・ガラフォラ政策研究員は、とくに中国軍の米軍への介入阻止作戦では、まず対艦多発ロケット発射基からの巡航ミサイル攻撃、遠洋からの海上艦艇や潜水艦による総合的な海洋攻撃、主力のロケット軍の地上配備の中・長距離の巡航、弾道両ミサイルによる総合的な攻撃、などという具体的な手段をあげて、戦闘内容の予測を語った。
ミッチェル航空宇宙研究所のマイケル・ダム上級研究員は、中国軍が米軍に対する介入阻止戦闘の冒頭で宇宙兵器や電子戦争能力、電磁波作戦により米軍の行動の情報空間の制覇を図り、米軍の行動を混乱させる、という予測を述べた。
まさに米中戦争のシナリオだった。アメリカ側ではこうした中国との軍事衝突の具体的な予測が公開の場で提起されているのだ。その背景には米側が中国と全面戦争をしても必ず勝つという態勢を整えておくことが戦争の抑止になる、という皮肉にも響く抑止戦略が確立されているのだともいえる。
さてこんな状況下で冒頭で紹介したように、アメリカ議会の上下両院共和党側有力議員たちが米国防総省に対してインド太平洋地区の米軍航空機の防衛が弱体だとして格納庫の強化など対空防衛の増強措置を緊急にとることを要請した。中国側の爆撃やミサイル攻撃に対する防御が不十分だとして、中国軍が自国の軍用機防衛を画期的に進めていることを指摘したのだ。この5月中旬の出来事である。
この動きはアメリカ議会で中国への警戒がさらに高まり、最悪の事態としての軍事衝突への備えの必要性も語られるようになった現実を示している。この要請の対象は日本国内の米軍基地の対空防衛増強をも含んでおり、日本の防衛にも影響は及ぶ。
この要請は下院の中国特別委員会の委員長ジョン・ムーンレナー議員や上院情報委員会の副委員長マルコ・ルビオ議員ら13人によりバイデン政権の空軍、海軍両省長官あての書簡で伝えられた。同書簡の内容は以下の骨子だった。
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