トランプ氏有罪評決、大統領選への影響は?
Japan In-depth / 2024年6月5日 9時14分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2024#23
2024年6月3-9日
【まとめ】
・トランプ氏、「愛人口止め料」関連疑惑で刑事訴追された事件でNY州裁判所の陪審員が有罪評決。
・関心はバイデン大統領の息子ハンター・バイデンの銃不法所持裁判の行方に。
・トランプの有罪評決の大統領選への影響はわからない。問題は7激戦州。
今週は米国内政の話から始めよう。先月末、興味深い事象が二つ連続して起きた。まずは、トランプ氏がいわゆる「愛人口止め料」関連疑惑で刑事訴追された事件。この裁判では5月30日にNY州裁判所の陪審員がトランプ氏は有罪と評決した。前大統領で有力大統領選候補の有罪評決という、前代未聞の出来事だ。
早速トランプ氏は「バイデンが仕掛けた魔女狩り不当裁判」だなどと大いに吠えたが、その表情は硬く険しかった。翌31日、今度はバイデン大統領が記者会見を行い、ガザ戦争を終わらせるための3段階からなるイスラエル提案の概要を発表。「今は決定的瞬間だ」などと述べ、ハマースが同提案を受け入れるよう強く求めた。
負け犬の如きトランプが裁判批判を行った翌日、今度は大統領然としたバイデンが重要外交政策を語る、というベタな演出はあまりに政治的で不快感を抱いたほど。まあ、それはさて置き、米国では今や関心はバイデン大統領の息子ハンター・バイデンの銃不法所持裁判の行方に移りつつある。それにしても面白い国だなぁ。
トランプの有罪評決で11月の大統領選にどの程度影響が出るのか、筆者は「わからない」、これが正直なコメントだ。一部全国世論調査ではバイデンが僅かながら逆転したとも報じられたが、問題は7激戦州、具体的には、時計回りでウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニア、ノースカロライナ、ジョージア、アリゾナ、ネバダの各州だ。
各州での世論調査は有罪宣告後まだ行われていないのではないか。また、仮に結果が出たとしても、投票日の5カ月以上も前の世論調査など、人気投票以上でも以下でもない。だから、「これで一喜一憂」しても仕方がないのだが、米国には4年に一度「これで食っている」人々もいる。これも米国内政の一断面なのだ。
今週はシンガポールでシャングリラ対話があった。アジア安保会議などと訳されているが、決して公式の国際会合ではない。英国シンクタンクIISSのやり手興行師が毎年主催し、便利が良いので皆が集まるようになったイベントだ。欧州ではミュンヘンで似たような会議が毎年開かれている。概要は報じられているので省かせて頂く。
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