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  アメリカ大統領選は郵便投票が決める?!

Japan In-depth / 2024年6月11日 21時0分

 前回の2020年11月の大統領選挙ではこの事前投票、とくに郵便投票が異様なほど多かった。この増加はそれまでの大統領選挙にくらべると、何十倍もの激増だった。その最大の理由は新型コロナウイルスのアメリカ国内での大感染だった。


 アメリカ政府当局の統計によると、前回の大統領選では投票総数約1億5千万のうち70%が事前投票だった。そのうちの郵便投票部分が総投票の43%にも達したという。つまり総投票の半数近くが郵便投票だったのだ。


 さらにその2020年の郵便投票の内訳はほぼ2対1の比率で民主党バイデン候補に投じられたことが明らかになった。その背景としては民主党が年来、郵便投票を組織的に拡大し、その結果を自党に有利に導く努力を重ねてきたという実態があった。有権者の登録の簡素化、郵便投票での本人確認の手続きの緩和、郵便投票の到着期限の緩和、郵便投票の内容と送付者の身分証の合致検査の緩和、政治活動家的な「投票収穫人」による多数の郵便投票の収集(収穫)の自由化などを求める、というような施策だった。


 民主党はこうした施策を2019年1月に「選挙改革法案」としてまとめ、ナンシー・ペロシ下院議長の主導で下院に提出した。全体の法案は不成立に終わったが、その内容の多数の項目が各州で採用された。だから2020年の大統領選での郵便投票でのバイデン票の大量獲得はその成果だったともいえたのだ。


 共和党はこれに対してトランプ氏自身が先頭に立って、郵便投票全体が不正に満ちていたと糾弾した。実際に各州の司法当局は郵便投票での単一人物の二重三重の重複投票、死者にきた投票券の重複郵送、州外に移転した有権者の不正投票など違反例を多数、摘発していた。だがトランプ氏が主張するほどに選挙全体を覆すという数の違反は認められなかったわけだ。


 しかし今回はそのトランプ氏自身が4月末にそれまでの方針を改め、共和党側支持者に事前投票、つまり郵便投票や不在投票も大事だとアピールした。この動きは共和党側としては非常に重要な変化だった。共和党支持者にも必要な人たちはきちんと郵便投票を実施するようにと通達したのだ。トランプ陣営でもやはりこのまま郵便投票自体を否定していると、郵便投票での民主党の前回のような優位が続いてしまうだろうという心配からの方針変更だとみられている。


 共和党全国委員会も今回の大統領選挙に備えて「選挙公正委員会」という特別の部門を組織内に新設した。この組織はまさに郵便投票や不在投票の集票、開票のプロセスを厳重に監視するという主旨だった。この特別委員会は各州にも代表を送り、とくに郵便投票の内容の点検に加わる意図だという。


 トランプ陣営の政策研究機関「アメリカ第一政策研究所」(AFPI)も多くの州で州当局に対して郵便投票に関する規則の強化や監視の徹底を求め、満足な回答が得られない場合は訴訟までを起こしている。


 このように共和党側ではなお郵便投票が構造的、さらには政治の経過のうえからも民主党に有利に働くとみる警戒心が強いわけである。郵便投票が現状のままでは共和党側への弱点となっているという認識の自認だともいえよう。さてその現実の結果がどう展開するか、ふだんの選挙戦の観察ではなかなか読みとりにくい要点なのだ。


トップ写真:2020年の大統領選挙、フィラデルフィアで郵便投票の集計が続く様子。2020年11月6日。出典:Photo by Chris McGrath/Getty Images


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