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時間旅行は一方通行?(下)「タイムトラベル論争」も時間の問題?その3

Japan In-depth / 2024年6月25日 7時0分

ただ、過去への旅となると、時間を遡れば現在に戻る、ということなので、そもそも現実的ではないというのが、大多数の物理学者の意見らしい。





大多数ということは、少数ながら異なる見方を開陳する人もいるわけだが、一例を挙げると、宇宙には複数の時空が存在する、と仮定して、複数の時空を結ぶ手段が見つかったならば、時間を遡ること可能では……と考える学者も現実にいるようだ。





SF作家の半村良が1971年に中編小説『戦国自衛隊』(角川文庫)を発表している。





日本海沿岸で演習中だった陸上自衛隊の補給小隊が、突如として戦国時代にタイムスリップしてしまう。補給小隊と言ってもAPC(装甲兵員輸送車)やヘリコプターも麾下にあり、少し後に海上自衛隊の哨戒艇も合流する。





彼らの前に、長尾景虎(後の上杉謙信)と名乗る戦国武将が現れることから、一挙にストーリーが盛り上がるのだが、1979年には千葉真一がアクション監督と主演を務めた映画も公開された。





当初は、事態がまるで飲み込めない自衛隊員たちであったが、主人公・伊庭三尉がこんなことを口にする。





「我々は時間というものについて、1日を24時間に区切るということ以外、ほとんどなにも知らないのだ」





映画でも、千葉真一演じる主人公(=伊庭)の台詞にあった。





ともあれ、少人数ながら近代兵器を備えた自衛隊は、上杉の軍勢と組んだことで戦国時代にあっては無敵の存在となり、川中島で武田信玄の軍勢を撃破した勢いで、当時の日本の中心地であった近畿地方にまで進出する。しかしその過程で、彼らがタイムスリップした先には織田信長が存在しないことを知った。





以下、ネタバレになってしまうのだが、映画では川中島の合戦がクライマックスとなるのに対し、原作の小説では、天下統一を目前にして、京都の寺に宿泊していた伊庭たちが、時の皇室の密命を受けたと思われる軍勢に襲撃され……という話となる。





(ここは本能寺だ)





(秀吉が生まれ、家康が生まれ、未来は同じ昭和となるに違いない)





つまり、彼らがタイムスリップした先の世界は、自衛隊員たちが暮らしていた世界とはかなり異なる歴史を持とうとしていたところ、時空を越えてきた自衛隊が見事それを修正してしまう、という「逆タイムパラドクス」ともいうべき設定なのだ。





これは、まったくの偶然だろうとしか考えようがないのだが、半村良の世界観にあって、時の流れというものは一直線に進行しているのではなく、いくつかの異なる時空が存在し、小説の中の自衛隊は、400年あまりの時間を直線的に遡ったのではなく、別の時空に飛ばされてしまったのだ。





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