福島で熱中症が多いわけと対策
Japan In-depth / 2024年6月26日 11時0分
上昌広(医療ガバナンス研究所理事長)
「上昌広と福島県浜通り便り」
【まとめ】
・福島県相馬地方の伝統行事、野馬追の開催が2ヶ月前倒しされ、熱中症が減った。
・東北地域に熱中症が多いのは、フェーン現象の好発地域だから。
・夏場の屋外行事は、安全性の観点から見直す必要がある。
5月25―27日、福島県相馬地方で伝統行事の野馬追が開催された。相馬市から招待され、私も見学した。
今年の野馬追は、開催時期を変更した。例年7月末に開催されていたが、参加者に熱中症が続出し、馬の死亡が相次いだため、開催時期が2ヶ月前倒しされた。
野馬追のクライマックスである甲冑競馬、神旗争奪戦が開催された5月26日の南相馬市の最高気温は24度。快適に観戦することができた。
騎馬武者として参加した原田文植医師(相馬中央病院)(トップ写真)は、「騎馬武者や大会関係者の負担も軽減された」という。彼が注目するのは、今年、熱中症やその前兆により救護所を利用したのは18人で、昨年と比べて65人減っていたことだ。
ただ、打撲や外傷による受診は21人で、昨年から9人増だった。これは、「5月が馬の繁殖期、つまり「盛り」の時期で元気だったから(原田医師)」だ。野馬追では馬の救護所が設けられるが、今年、受診したのは38頭で、このうち34頭は熱中症が原因だった。昨年は111頭が受診し、すべて熱中症と関係があったこととは対照的だ。野馬追の開催時期の変更は英断だったといっていい。
なぜ、野馬追で、このような議論が盛り上がったのか。それは、福島県が熱中症の「ホットスポット」だからだ。昨年5月~9月に、福島県では1840人が熱中症で救急搬送されている。これは都道府県別では17位だ。もっとも多いのは東京都の7325人で、大阪府(5951人)、埼玉県(5719人)、愛知県(5422人)が次ぐ。
真夏の間、マスコミは大都市で熱中症が続出することを連日のように報じる。多くの読者は、「熱中症は大都会の高齢者の病気」とお考えだろうが、実態はやや異なる。図1は昨年の5-9月の熱中症による救急搬送の人口1万人あたりの数を示す。福島県は10.4件で、全国で6番目に多い。上位10県のうち、5県は東北地方だ。図2をご覧頂ければ、東北地方が熱中症の危険地域であることをご理解いただけるであろう。
▲図1 緊急搬送における都道府県別の人口1万人あたりの熱中症患者数(作成:医療ガバナンス学会 山下えりか)
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