「トランプ陣営の世界戦略がさらに明るみに」その3 中国こそが最大の脅威
Japan In-depth / 2024年6月27日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・AFPIの政策報告書によると、トランプ氏は大統領在任中に独裁的な国家との交渉で「取引的な外交」が役立つことを確認した。
・軍事力は必要とみなした場合には断固として行使するが、あくまで明確な条件を最初からつける。
・同報告書の最大焦点ともいえるのは中国に対する深刻な脅威の認識だった。
さてこの章はアメリカ第一外交のもうひとつの特徴として独裁国家への「取引的外交」を指摘していた。つまり中国、ロシア、北朝鮮、イランなどの独裁、専制かつ反米の国家が国際的に無法、無謀な行動に出ている場合、商業的取引、つまりtransactionのような態度で交渉にのぞむことも有利な結果をもたらすことがあるのだ、という。
「トランプ氏は大統領在任中にも独裁的な国家との交渉では取引的な外交が役立つことを確認した。ロシア、中国、北朝鮮のような国際的に乱暴な行動をとり、国内的には人権産圧をするような専制国家に対しては、ビジネス的な取引のように、これをしてくれれば、これを供する、というふうに相手に持ちかける。売ったり、買ったりのような態度が相手の意外な譲歩を引き出す場合がある、ということだ」
この種の取引にはときに金正恩のような独裁者をほめてみたりする要素も含まれるだろう。現実にトランプ氏は大統領時代に金正恩氏や習近平主席に対して「有能な指導者だ」とか「意外と好人物だ」という次元こそ低いが、明らかな褒め言葉を述べたことがある。これも相手の譲歩を引き出すための「取引的な外交」だったというわけである。
この章は軍事力の使用についてもトランプ陣営とバイデン政権との政策の違いを何度も強調していた。簡単に述べれば、トランプ陣営はアメリカの国民の命と国家の利益を守るためには選別的に軍事力を断固として使うが、バイデン政権はとにかく軍事手段を忌避するのだ、という趣旨だった。
「トランプ大統領は2020年の一般教書演説で『もし他の国家や集団がアメリカの国民を殺し、あるいはアメリカの国益を傷つけるような行動をとれば、米側からの軍事的な報復を避けることはできない』と述べた。
この原則の好例は米軍による2020年1月のイラン革命防衛隊ソレイマニ司令官の暗殺だった。米軍の無人機により殺されたソレイマニ司令官はそれまでに直接、間接に多数のアメリカの軍人、民間人を殺害したことが確認されていた。
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