同床異夢の露朝新条約、危険な金正恩の「誤信」(上)
Japan In-depth / 2024年6月28日 11時8分
朴斗鎮(コリア国際研究所所長)
【まとめ】
・6月19日、北朝鮮で「露朝包括的戦略パートナーシップ条約」が締結。
・今回条約は「同盟条約」とはされていない。
・ロシアが定める最高位の「同盟条約」ではなくワンランク下の条約となっている。
ロシアのプーチン大統領は6月19日午前3時前、北朝鮮に到着した。24年ぶりの訪朝だ。金正恩国務委員長(総書記)が多くの幹部たちを帯同せず一人空港で出迎えた。
18―19日訪朝予定が、プーチンのいつもの遅刻戦術で19日当日のみの訪朝となった。金正恩を焦らせ主導権を取るためのプーチン流の作戦だった可能性がある。プーチンは、金正恩との首脳会談で「露朝包括的戦略パートナーシップ条約」を締結し、すべての歓迎行事を終えて19日午後12時頃、金正恩が見送る中で次の訪問国ベトナムに飛び立った。
■「朝ロ包括的戦略パートナーシップ条約」締結の背景
英国のテレグラフ紙は6月14日、プーチン訪朝の背景について、プーチンのウクライナ侵略がいかに窮地に陥ってぃるかを示すものだと報道した。
プーチンがウクライナで戦争を繰り広げているが、ロシア海軍は、全世界はおろか、自国の東部海域でも米国に挑戦することはおぼつかない状態だと指摘し、十分な海軍を持たないウクライナにすら深刻な打撃を被ったと皮肉った。
また核使用をちらつかせてレッドラインを云々したが、いまやロシア本土が攻撃され、間もなく欧米が支援するF16戦闘機がロシアの上空を飛ぶ状況にまでなっているが、その時にどう対応するかが見ものだと主張した。
続けて、結局プーチンは、たびたびレッドラインを口にして武力での解決に出たが、今やレッドラインの脅迫は崩れ、プーチンに残ったカードはほとんどなくなったと分析した。
事実、プーチンはいま、核で脅迫すること以外は手段がなくなり窮地に陥っている。6月13日にイタリア南部プーリア州ファサーノで開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、米国のバイデン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が「安全保障協力協定」を締結した。期限は10年間。安定的な武器供与を図り、共同訓練や防衛産業強化といった支援を実施するが、これはウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を念頭に置いたものだ。
そればかりか、ウクライナと安保協力に関する2国間協定を結んでいる他の国々(17カ国)も続々と莫大な軍事支援に乗り出した。NATO加盟国は毎年400億ドルのを支援を決定した。G7国家も500億ドルの借款をウクライナに与えることを決定したが、この支援財源として、凍結したロシア資産(4400億ドル)の運用利子を当てることも決定された。議会を通過した米国の610億ドルを含めると1510億ドルの支援が確保されたのである。
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