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イランで核兵器取得論争が活発化~イスラム体制の形骸化招く可能性も

Japan In-depth / 2024年6月29日 18時4分

イランで核兵器取得論争が活発化~イスラム体制の形骸化招く可能性も




池滝和秀(中東ジャーナリスト)





「池滝和秀の中東烈々」





【まとめ】





・イランで核兵器を取得すべきだとの声が一部で高まっている。





・イランが核兵器保有国への道を歩もうとするなら、安全保障が揺らぎかねない。





・又、宗教的な教えやファトワの信頼性は失われ、宗教体制形骸化が加速化するだろう。





 





イランで核兵器を取得すべきだとの声が一部で高まっている。特に昨年10月のパレスチナのイスラム組織ハマスによるイスラエル南部への奇襲攻撃や、4月のイスラエルとイランによる史上初めての直接攻撃を受け、抑止力を確保する観点から論じられている。





イランには、国際社会から制裁解除などの譲歩を引き出す思惑もあるとみられるが、実際に脅威を感じたイスラエルが核関連施設に対する先制攻撃に打って出たり、イランが実際に核兵器保有国を目指す動きに出たりする恐れもある。2002年のイラン核兵器開発疑惑の発覚以降に何度も語られてきた危機は、これまでにない段階に達している。





イランの核開発は核爆弾製造の意図があるのではないかと強く疑われてきた。国際原子力機関(IAEA)の最近の非公開の報告書でも、イランは濃縮ウランの備蓄量を増加させ、核兵器の製造を決断すれば、数カ月で数個分の核爆弾を製造することができるとみられている。ミサイルに搭載するための核弾頭の小型化など実際の兵器化には課題があるとの見方もあるが、核兵器取得は現実味を帯びて語られている。





しかし、イランに何度か訪れて現地で聞かされてきたイランの核兵器に対する嫌悪感を知る者としては、今の動きには失望を感じざるを得ない。実際にイランが核兵器取得に動けば、イランのイスラム体制の信認はさらに揺らぐことになるだろう。





というのも、イラン政府の核兵器に対する公式見解は、大量破壊兵器の保有はイスラム教的に禁止されているというものである。最高指導者のファトワ(宗教令)によれば、いかなる種類の大量破壊兵器の製造や使用もハラーム(禁止されるものや行為)だ。





イランは、1980〜88年のイラン・イラク戦争でイラクによる化学兵器攻撃を受け、大量破壊兵器の悲惨さを知ったとされる。イランでは当時の状況を振り返る企画展も行われ、訪れた筆者はイランの大量破壊兵器を持たないという意思や決意を感じ取った。





反米意識が強いイランの現体制が極めて親日的なのも、非人道的な兵器である核爆弾を市街地に落とした米国に対する敵視と、唯一の被爆国である日本の歴史に対する共感が表裏一体となっている。イランを取材で訪れた際、唯一の被爆国として日本から来た記者に対して、イラン政府関係者や市民は特別な感情を持って迎えてくれた。





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