過去の暗殺事件、ほとんどが〝理由なき犯行〟 少ない政治的背景
Japan In-depth / 2024年7月14日 21時19分
樫山幸夫(ジャーナリスト、元産経新聞論説委員長)
【まとめ】
・カムバックをめざすトランプ米前大統領が遊説中、撃たれた負傷した。生命に別条なし。
・選挙戦への影響がとりざたされているが、今後の状況を見守るべきだろう。
・洋の東西を問わず、選挙中の襲撃事件は明確な政治的動機をもった犯行というより、曖昧な〝理由なき犯行〟が少なくない。
■ タフさ誇示、トランプ人気、上昇か
遊説中に撃たれたトランプ前大統領のけがの程度は不明だが、生命に別条なかったのは不幸中の幸いだった。
米国内、各国から凶行への非難、糾弾の声が相次いでおり、選挙戦への影響を推し量る動きが広がっている。銃撃にひるまずこぶしを突きあげタフさを誇示したトランプ氏の人気がたかまる可能性も指摘されている。
20歳の容疑者は射殺され、いまのところ動機などは明らかではないが、候補者を排除しようとして企てた暗殺計画が逆にその人気を高める結果になったなら、皮肉というほかはない。
一つの転機で情勢が大きく変わりうる選挙のことであり、帰趨を占うには今後の展開をしばらく注視する必要があろう。
■ 女優の気をひくために大統領狙う
アメリカ大統領、その候補が撃たれた過去の事件を見ると、1963年にテキサス州を遊説中に撃たれ死亡したジョン・F・ケネディ大統領(民主党)、1981年、ワシントン市内のホテルで撃たれ重傷を負ったロナルド・レーガン大統領(共和党)のケースなどがある。
ケネディ暗殺容疑者は逮捕2日後、留置されていたダラス市内の警察署で暗殺され動機は不明のまま。
レーガン狙撃犯は精神を病んでおり、ファンだった女優の気をひくためというのが動機で政治的な色彩はなかった。
大統領選候補の襲撃としては、1968年の予備選中、ロバート・ケネディ上院議員(民主党)が撃たれた事件を老境に入った人なら覚えているだろう。
ケネディ大統領の実弟、ことしの大統領選を無所属で戦っているロバート・ケネディ・ジュニア氏の父で、伝統的にイスラエル寄りのアメリカの中東政策に反発するパレスチナ系青年の犯行だった。ケネディ氏が選挙戦を継続していたら、当選有力とみられていた。
記憶している人は少ないだろうが、1972年の大統領選で第3の党から出馬していたジョージ・ウォレス・アラバマ州知事も、政治的動機を持たない青年に撃たれ、下半身不随となった。
犯人は氏を標的にしていたわけではなく、有名人ならだれでもよかったなどと供述した。
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