日中関係の再考 その2 中国の敵対的な言動
Japan In-depth / 2024年8月2日 17時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・中国は日本に対しては多層な悪意や敵意を抱き、その背後には日本という国家への威圧や侵害の意図を有する構図が浮かんでくる。
・いまの日本と中国との間で起きてきたトラブルの類はみな中国側からの言動なのである。
・日本政府はあたかも上記の中国側の日本への敵対的言動がないかのように、中国側にすり寄るような姿勢を見せ始めたのである。
日中関係を2024年夏という時点で見直すためには、いま日本と中国の間で具体的になにが起きているかの再考察が必要だろう。日本側からの視点という前提で、中国側が最近、日本に対して仕かけてきた言動をみよう。
第1は、中国の武装艦艇による日本固有の領土、尖閣諸島海域への恒常的な侵入である。
中国人民解放軍の傘下にある中国海警局の武装艦艇が文字通り、連日のように日本の領海やそのすぐ外側の接続水域に無断で侵入してくる。中国側は周知のように尖閣諸島を自国領土だと主張する。その主張には根拠がなく、国際的にみても「現状を武力で変えようとする暴挙」である。だが中国側はすでに尖閣諸島が自国領であるかのように平然と不法侵入を重ねるのだ。
第2は、中国政府による日本の水産品の輸入の一方的な全面禁止である。
中国政府は2023年8月、日本からの水産物の輸入を全面禁止した。日本側による廃炉になった福島の原子炉の処理水放出に対して、その水が汚染水だと一方的に断じての措置だった。この処理水になんの汚染もないことは国連機関の国際原子力機関(IAEA)やアメリカ政府の食品医薬品局(FDA)が公式に認めていたにもかかわらず、だった。
第3は、日本駐在の中国大使による日本への軍事攻撃の脅しである。
中国の日本駐在の呉江浩大使はこの5月末、東京都内の中国大使館での日本側各界の代表たちとの会合で、日本がもし台湾有事にかかわるなど、台湾支援の一定限度を越える行動に出れば、「日本の民衆は火の中に連れ込まれる」と言明した。明らかに軍事的な恫喝だった。その背景には中国の軍事専門家集団が2021年7月、台湾有事で日本の自衛隊が出動すれば、中国は日本本土に核ミサイルを撃ちこむというシナリオを描いた動画を発表した事実がある。
第4は、中国当局による中国領内での日本企業駐在員の一連の逮捕である。
中国外交部の報道官は今年3月の記者会見で日本のアステラス製薬の中国駐在の日本人社員がすでに一年近く中国当局に拘束、逮捕されていることを発表した。その容疑は「反スパイ法違反」だという。だがその具体的な内容は一切、秘密のままだった。中国ではこの法律が制定されて以来、日本人がこれまで合計17人が逮捕されてきた。この措置は被疑者側の権利を無視する不透明、不公正な抑圧である。
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