日中関係の再考 その3 両国の類似とは
Japan In-depth / 2024年8月6日 12時41分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・日中両国間には多くの類似点や共通項がある。
・多数の日本国民が中国に滞在している事実は、日中両国の絆の結果だといえる。
・中国側から日本側への敵対的な言動は、両国関係において日本側にとっての最大の懸念の対象である。
日本と中国とのいまの関係を特徴づけてきた。だが日中両国はそもそもどんな間柄にあるのか。両国の関係の全体を俯瞰してみよう。大局的、歴史的な特徴づけともいえる考察としたい。
日本と中国との間には当然ながら多くの類似点、共通点がある。プラスとマイナスに分ければ、プラス、あるいは前向きとも呼べる共通項である。その骨子を大まかに列記してみよう。
まず第1は人種や民族の類似である。
日本人も中国人も当然ながら人種としてはアジア系である。同文同種という言葉に示されるように、人種は同じだといえる。民族としては異なるがきわめて似ている。
私自身、中国に2年間住んでみて、人の集団に入れば、中国人から同じ中国人だとみられる、という感じが強かった。この実感は同じアジアでも、ベトナムやタイなどでは経験したことがなかった。これらの国々では私は明らかに現地の人とは異なる外国人としてみられた。ところが中国では会話でも始めない限り、一見では同じ中国人とみられたといえる。
第2は文化の共有である。
中国での文字が日本に渡り、漢字として日本語の筆記部分の母体となったことは周知の事実である。これまた同文同種という言葉の前半が示している。日本では中国語の導入も多い。起承転結、温故知新、臥薪嘗胆など、どうみてもルーツは中国という言葉が多数、日常でも使われている。
日本の昭和とか明治という年号にしても、いまの令和まではみな中国の古典からの導入だったという。令和が初の純日本起源の年号だというのだ。明治時代以降は欧米からの文物がまず日本に入り、そこから日本で訳された漢字名が中国に渡ったという事例も多かった。
第3は地理上の近似性である。
日本も中国も同じ東アジア地域に位置する。一衣帯水という言葉が象徴するように隣国同士なのだ。このことをもって「日中両国は引っ越しのできない関係」だと評する向きも多い。日本の自民党の親中派領袖の二階俊博氏の好きな言葉だ。同氏の場合、だから日本側は中国の要望に前向きに応じるべきだという主張が伴う。
だが全世界を見回すと、隣国だからこそ激烈な紛争を続ける諸国が多い。インドとパキスタン、イスラエルとアラブ諸国などである。とはいえ日本と中国は地理的に近いという理由で人間の往来など絆が強まるという側面もあった。
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