性別論争の陰に政治的暗闘あり 今から五輪が楽しみ その3
Japan In-depth / 2024年8月16日 11時5分
IBAクレムレフ会長(ロシア)は、前述の2選手の場合、男性ホルモンの一種であるテストステロン値がきわめて高いとして、2選手を「男性」と定義した。
つまりは男性並みのパンチ力があり、そのような選手を女子の試合に出場させるわけには行かない、という論理であった。
IBAに近い筋によると、テストステロン値が異様に高い女子選手というのは、筋肉を強化するステロイド剤を服用したのと同様の医学的効果が得られるので、ステロイド剤が禁止薬物である以上、こうした選手が出場資格を失うのは理の当然、ということになるらしい。
しかしながら、IBAは詳細な検査データを公表していない上、学者や専門家の間からは、
「そもそもボクシングをやる女性はテストステロン値が高めである」
「XY染色体を持つ女性がそうでない(大多数の)女性よりも力が強いという説は、根拠に乏しい」
といった批判的な意見が聞かれる。
それよりなにより、そもそも2人のXY染色体を持つ女性の選手は、IBAとIOCの抗争に巻き込まれたのではないか、と見る向きが、少なくとも日本のメディアにおいては優勢だ。
IBAはその名の通り、アマチュア・ボクシングの国際統括団体として1946年に設立され、IOCもその地位を承認していた。
ところが2017年以降、組織内での不透明な経理(これにより元会長が終身出入り禁止処分を受けている)や、世界大会開催地の選定をめぐる汚職疑惑、さらには八百長試合が行われたのでは、との疑惑が噴出。
ついには2019年、IOCはIBAに対して、資格停止処分を下したのである。
2020年東京五輪、2024年羽パリ五輪については、ボクシングを正式種目として残すことが併せて発表されたのだが、どうやらIBAの側が収まらなかったらしい。
と言うのは、ご案内の通り新型コロナ禍のせいで2021年に延期された東京五輪には、両選手はなんの問題もなく出場しているからだ。結果メダルには届かず、この時は二人の性別を問題視する声など、まったく聞かれなかった。
ところがその後、前述のようにIBAが主催した昨年の世界大会では、両選手とも「性別」を理由に出場資格を得られなかったわけだが、今次の五輪移載しては、IOCは、
「(両選手は)女性として生まれ育ち、パスポートにも女性と明記されている」
として、出場には問題なし、との判断を下したというわけだ。
さらに、IBAの現会長はロシア人で、プーチン政権と非常に近く、ロシアによるウクライナ侵攻後、IOCが示したガイドラインを無視して、ロシアとベラルーシの選手が国旗を掲げて参加することを認めた。これにより米英など19カ国が大会をボイコットしている。
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