米、イラン、イスラエル「強硬派の天国」再び
Japan In-depth / 2024年9月4日 10時59分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2024#36
2024年9月2日-9月8日
【まとめ】
・イスラエルで、ハマースとの早期停戦による人質解放を求める反政府ゼネストが始まった。
・ネタニヤフ首相が、「フィラデルフィア回廊」からの軍撤退に応じる可能性は少ない。
・ネタニヤフには、米、イラン、イスラエルの「強硬派の天国」の記憶があるからだ。
今週、遂に米国のレーバー・デー週末がやって来た。これまでは「各種世論調査は人気投票みたいなものであまり意味がない」「9月第一週末で米国の夏休みは終わり、無党派層が本気で大統領選挙を考え始めるのは、その後だ」などとお茶を濁してきた。しかし、来週からはもう「この手」が使えない。困ったことになったなぁ・・・。
だからという訳ではないが、今週は米大統領選挙よりも気になることを書く。イスラエル国内でハマースとの早期停戦による人質解放を求める反政府ゼネストが始まったからだ。だが、ネタニヤフは譲歩するどころか、「ダブルダウン」、すなわち、より強硬な姿勢で停戦要求を拒否した。「ネタニヤフらしい」と言えば、「らしい」のだが・・・。
バイデン政権は「ネタニヤフの努力が足りない」と批判しているが、これほどイスラエル首相に「コケ」にされた米大統領も少ないのではないか。やはり、ネタニヤフは何が何でも11月5日まで政策変更する気はなさそうだ。そんなことをすれば内政的にはオウンゴールとなるし、国際的にも何とか乗り切れると踏んでいるのだろう。
この辺の事情については「強硬派のパラダイス、再び?(仮題)」と題する小論を今週の産経新聞WorldWatchに書いた。バイデン政権がどれほど努力しようと、ネタニヤフは譲歩しそうにない。ネタニヤフには過去何度も成功した、米、イラン、イスラエルの「強硬派」同士が奇妙にお互いを支え合う「強硬派の天国」の記憶があるからだ。
詳細は今週木曜日の産経新聞をご一読願いたいが、結論だけ言えば、ネタニヤフがその主張を翻し、米国の圧力に屈して、ハマースとの早期停戦・人質交換といわゆる「フィラデルフィ回廊(ガザとエジプトの境界地区)」からのイスラエル軍撤退に応じる可能性は少ないということ。逆に、譲歩すれば、筆者は驚愕するだろう、と思う。
そもそも、今回の大規模反政府デモに対しネタニヤフ首相は「ここで譲歩すればハマースは更に人質を殺害し更なる譲歩を迫ってくるだけ」と主張している。残念ながら、これも正論なのだろう・・・。でも、これって、昔どこかで見た光景に似ているではないか。筆者の言うデジャヴゥ(既視感)だ。詳しくは産経新聞を見てほしい。
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