カマラ・ハリス候補はカメレオン政治家か その2 出自政治の典型人物
Japan In-depth / 2024年10月2日 17時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・「黒人女性」という出自ゆえのハリス氏、不人気を覆す人気。
・バイデン推薦後、激戦区でトランプ氏をリード。
・不法入国者増加問題、現地視察は一度もなし。人事管理の欠陥やメディア対応への批判も。
カマラ・ハリス氏はこれほどユニークな経歴を踏まえて、はなばなしくバイデン政権下のホワイトハウスに副大統領として入った。2021年1月だった。以来、副大統領としての3年半以上、その実績はふしぎなほど希薄だった。「初の黒人女性副大統領」というバイデン政権の大胆な人事が輝かしい名誉のバッジとして光りながらも、実務の結果がまるで伴わないという印象だった。
ハリス氏はバイデン政権はじめ民主党リベラル派が誇りとするアイデンティティ・ポリテイックス(出自政治)のスターとなった。この政治志向は人種、民族、性別など個人の生来の出身や帰属、つまり出自を優先させる。政治の多様性と開放というスローガンの下に、個人の政治信条よりもその人間の出自によってリベラルか保守か、民主党が共和党かを決める、という考え方である。その方式ではどうしても個々人の政策や思想、実績は二の次ともなりかねない。
バイデン大統領は当初から副大統領は女性、しかも少数民族という大前提を打ち出して、ハリス氏を国家のナンバー2に選んだのだった。そもそも政治家としてのハリス氏がどんな政策を抱き、どんな実績を積んできたか、ということよりも、黒人女性だったことが優先されたと評しても過言ではないのだ。
バイデン大統領が選挙からの撤退を発表したのは7月21日だった。同時に後継にはハリス副大統領を推薦すると言明した。そして民主党内でオバマ元大統領ら大物があいついでハリス氏支援を表明した。そのハリス氏の民主党大統領候補としての指名が確定したのが8月5日だった。
この間にハリス人気は民主党陣営では天まで上がれ、という勢いで高まった。無党派の中間層でも波及の似た傾向がうかがわれた。選挙全体の帰趨を動かすとされるウィスコンシン、ペンシルベニアという激戦の7州でもハリス氏への支持率がトランプ氏をじりじりと追い詰め、僅差ながらリードするところまで出てきた。この現象はこれまでのハリス氏の副大統領としての評価からすれば、奇妙にみえた。バイデン政権下のハリス氏はそれまで史上最低の人気の副大統領とまで断じられてきたからだった。
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