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米側が苦笑した石破新首相のアジア版NATO案

Japan In-depth / 2024年10月6日 0時25分

 しかし私自身が直接に取材したアメリカ側の関係者たちの反応はさらに辛辣だった。日本の新首相がこんな現実性に欠ける政策を対外的に発表するとは、信じられないという対応だった。石破氏は日本では防衛問題に詳しいとされるが、今回の発想は無知に等しいという表現を名前を出さないという条件で述べた専門家もいた。とにかくアメリカ側の専門家全体の反応はこの石破構想を一笑にふす、という感じなのだ。もっと率直に述べれば嘲笑、苦笑という印象でさえあった。


 日本の立場からこのアジア版NATO案を考えただけでも、その非現実性が容易に分かる。日本、韓国、フィリピン、インドといった諸国が反中集団同盟に結集できるのか。インドはそもそも非同盟の国是を保ってきた。韓国が有事の際に日本の自衛隊を招いて、共同戦闘を展開する可能性があるのか。まして日本側では、憲法の制約で集団的自衛権を自由に行使はできないままなのだ。さらに、アメリカの核兵器を日本国内に持ち込むなど、石破氏がこれまで提起したことがあったのか。


 本来のNATOは1949年にソ連の軍事脅威を抑止する集団同盟として結成された。当時の加盟は12ヵ国、アメリカの強大な軍事力、とくに核戦力がソ連の圧倒的に優位な通常戦力での攻撃や威嚇を抑止することが主眼だった。いまではフィンランド、スウェーデンという年来の中立国までが加わり、加盟は32ヵ国となった。このNATOの加盟国はみな自由民主主義、法の支配、人権尊重などを共有価値とする。共通体質の諸国家なのだ。アジアの状況とはまるで異なる。


 この石破構想に対しては当然ながら、すでにインドも中国も反対を表明した。あまりにも明白な予想通りの反応だった。こんな非現実的な構想を実際に提起して、国際的にネガティブな反応に怯えたかのようにその案を引っ込め始めた石破新首相、そんな人物に国家の運命を委ねることには深刻な不安がある。


*この記事は日本戦略研究フォーラムのサイトに掲載された古森義久氏の寄稿論文の転載です。


トップ写真:首相官邸で石破茂首相が記者会見に臨む様子(2024年10月1日)


出典:Photo by Yuichi Yamazaki - Pool/Getty Images


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