イスラエルの対イラン報復攻撃、米大統領選挙前にも
Japan In-depth / 2024年10月16日 12時53分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2024#42
2024年10月14-20日
【まとめ】
・イスラエルの対イラン報復攻撃への緊張感が高まっている
・攻撃対象に懸念、石油価格高騰のおそれも
・米反対により、核施設への攻撃の可能性は低い
日本のメディアでは10月27日の総選挙の行方ばかりに関心が集まっている。それ自体当然だろうし、文句を言うつもりもない。筆者の注目は、先週お伝えした通り、いつ行われてもおかしくないイスラエルによる対イラン大規模直接報復攻撃のタイミング、対象と規模の方である。米大統領選挙への悪影響だって大いに気になる。
でも、その前に、まずは東アジア情勢について一言。韓国を第一の「敵国」とした北朝鮮は昨日、南に通ずる道路を爆破したそうだ。中国は台湾を取り囲むような形で軍事演習を実施したという。でも、これって両国の「強さ」ではなく、むしろ「弱さ」を示している、というのが筆者の見方。勿論、希望的観測、とのご批判は覚悟の上である。
そもそも、1950年以来、北朝鮮にとって韓国は常に「敵国」だったのであり、いくら文在寅政権の南北対話が失敗したとはいえ、今更「敵国」と言われても誰も驚かない。これ見よがしの道路爆破は、北朝鮮国内への韓国文化の「浸透」が如何に脅威であるか、を如実に示しているのだろう。北の「困ったちゃん」は今も健在なのである。
中国の台湾周辺軍事演習も同様だ。台湾の海上封鎖を狙ったもので、規模こそ拡大したのだろうが、基本的には2022年8月のNペローシ米下院議長(当時)訪台時に行われた演習と同類だ。でも、本当に台湾を取る気があるなら、ハマースと同様、今中国は台湾侵攻なんか「やる気がない」と台湾側に思わせるべきだと思うのだが...
こんな軍事演習をやっても、台湾当局は勿論、日米も懸念を深めて、抑止力拡大のペースを早めるだけだろうに...報道によれば、人民解放軍は戦略ロケット部隊も、潜水艦部隊も、あまり機能していないそうだ。されば、ここは中国の動きを冷静に分析すべきではないか、と思っている。さて、話を本題の中東情勢に戻そう。
イスラエルのネタニヤフ首相は、対イラン報復攻撃を11月の米大統領選挙まで待つつもりなどない。180発もの弾道ミサイルを領土内に直接撃ち込まれたのだから、報復攻撃の大義名分は十分だ。最大の問題は攻撃対象だろうが、米側が強く反対していることもあり、流石のイスラエルも、今回は核施設を狙わないだろう。
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