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福島第一原発事故からの13年:医学研究の進展と課題

Japan In-depth / 2024年10月24日 9時49分

ただ、残りの17%の論文が、海外の研究者のみで書かれていることは特記すべきだ。福島第一原発事故に対して、世界中が強い関心を抱いていたことを示している。


実は、今回の福島原発事故まで、原発事故対策については、十分な研究がなされてこなかった。1979年に発生した米国のスリーマイル島原発事故に関する医学論文は161報、1986年のチェルノブイリ原発事故に関する医学論文は741報しか発表されていない。福島原発事故の9%、26%に過ぎない。世界中の原発事故の研究者が、福島に関心を抱いたのも当然だ。


興味深いのは、日本と海外で論文発表のスピードが異なることだ。図3は、日本の研究者を含む論文数と、海外の研究者だけで発表した論文数の推移を示す。


 









写真)図3


出典)医療ガバナンス研究所


日本人の研究は原発事故から5年間増え続けている。一方、海外研究者に論文は、2011年は日本人研究者を含む論文よりも多く、2012年も遜色ないが、その後、減少に転ずる。


日本人研究者による研究が、徐々に増加したのは、この間に福島県立医科大などの研究機関を中心に、政府が研究資金を投じたからだろう。海外では、このような動きはなかった。ちなみに、近年、論文数が減少しているのは、原発事故から時間が経過し、このような研究資金が減額されたからだ。今後も、福島原発に関する研究は減っていくだろう。世界が関心を抱く長期的な影響を、きっちりと評価できるか心許ない。


 









では、日本で研究をリードした福島医大は、どの程度の論文を発表しているのだろうか。その合計は264報で、世界全体の15%、日本国内の18%を占める。


福島医大の論文発表の特徴は、原発事故から数年で急速に発表数を増やしたことだ。福島医大は、本来、研究を志向する大学ではない。原発事故が起こるまで、研究人材の層は薄かった。原発事故後、長崎大や広島大学など被曝研究のノウハウを有する大学から教授を招聘し、強化に努めた。その成果は、2013年頃より顕在化し、2017年には日本からの発表の25%に福島医大が関与するようになった。


ところが、2018年以降、勢いは失速する。2019年の論文発表数は22報で、日本からの発表の15%を占めるにすぎなくなる。前述したように、政府からの研究費が減額され、大学の研究力が陰ったことが大きいのだろう。


興味深いのは、その後、福島医大が研究力を再び高めることだ。2022年には過去最高の37報の論文を発表した。これは日本からの論文の26%に相当する。


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