トランプ氏への警戒心は「過剰」か? 「再トラ」ついに現実に その3
Japan In-depth / 2024年11月13日 23時0分
と一蹴した。一方、トランプ陣営の広報担当者は、「各国の指導者が早々とトランプ氏への接触を試みている」とだけ述べて、プーチン氏との会談について否定も肯定もしていない。真偽のほどは、少なくとも当面の間は藪の中であろうが、就任前からこうした騒ぎが持ち上がった原因は、もっぱら過去のトランプ氏の言動にある。
わが国でも大きく報じられたので、ご記憶の読者もおられると思うが、トランプ氏はかねてから、「自分が大統領になったら、ロシアとウクライナとの戦争は24時間以内に終わらせる」などと大風呂敷を広げていた。ただし、具体的な方法については明らかにしていない。
結果、様々な憶測が飛び交うこととなったわけだが、トランプ陣営に近い消息筋からまことしやかに喧伝されたのは、「まずロシアが実効支配しているウクライナの領土については、現状を固定化し(つまり占領状態を追認し)、一方、ウクライナのNATO加盟は認めない。その見返りに、ウクライナへは武器援助や不寄港資金の援助を継続する」という解決案で、ウクライナがこれを呑まなければ、武器援助を直ちに停止する、というものだった。
血みどろの戦争は一日も早く収束させるべきだ、と言われれば反論は難しいので、微妙な問題は残るけれども、武力で現状を変えようとしたプーチン政権を重く罰するのではなく、むしろ「やった者勝ち」の和平をウクライナに強いたりすれば、必ずや将来に禍根を残すであろう。なにしろ、領土の20%以上をロシアに割譲せよ、というに等しい話なのだ。
ただ、目下のところトランプ氏自身は、上記のような解決案については「承認していない」と明言している。私も個人的に、こうした「和平」は現実のものとはならないであろうし、そもそも「トランプ政権によって、世界秩序はメチャクチャにされる」という見方は、いささか過剰反応ではないかと考えている。
理由は簡単で、ドナルド・トランプという政治家は「言うだけ番長」だと思えるからだ。若い読者層は、今ここで「?」というリアクションを示したかと思われるので、蛇足の説明を加えさせていただくと、昭和の時代、具体的には1960年代の終わり頃に『夕焼け番長』(梶原一騎・原作 庄司としお・作画 秋田書店)という劇画がヒットした。そのタイトルをもじって、大口を叩くが実行が伴わない人のことを、そう呼んで揶揄したのである。
2014年に大統領に初当選した際、トランプ氏は、「メキシコとの国境に壁を築き、その建設費用はメキシコに支払わせる」などと宣言していたが、結局、そのようなことは実現していない。ヨーロッパ諸国が相応の軍事費を負担していないとして、NATOからの脱退もちらつかせていたが、これももちろん実現していない。むしろロシアによるウクライナ侵攻の結果、加盟国は軍事費を大幅に増額し、とりわけ地上戦力は急ピッチで強化されている。
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