「外交は内政の延長」―メディアの振る舞い批判に潜む課題
Japan In-depth / 2024年11月27日 14時22分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2024#48
2024年11月25日-12月1日
【まとめ】
・外交は内政の延長であり、石破首相の国際会議での振る舞いも国内の政治状況が影響しているため、批判はその背景を考慮すべきである。
・日本のメディアは政策よりも首相の振る舞いに焦点を当てがちで、偏った批判が目立つ点が課題となっている。
・停戦は外交ではなく戦場の状況によって決まり、ヒズブッラが停戦を決定したのは組織壊滅の危機感が背景にあると考えられる。
クラウゼヴィッツ的な表現をお許し頂ければ、「外交は内政の延長」なのだとつくづく思う。これは最近の石破茂首相のAPEC、G20首脳会合出席に関する日本での報道を見聞きして感じたことだ。相変わらず、日本メディアの首脳外交報道は旧態依然、「政治部記者」による「国内政局視点」がどうしても抜けないのだ。
今回の中南米出張の内容は、冷静かつ公平に見て、「可もなく、不可もない」という意味で「まあまあの出来」だったと思う。だが、予想した通り、日本のメディアやSNSでは石破首相の「振る舞い」に対し厳しい批判が噴出した。ちなみに、筆者はいつもの通り、官邸に「ヨイショ」する気など全くないので、念のため。
外交とは、結局は「外国人との交わり」という種類の人間関係だから、人によってスタイルが異なるのは当然。しかし、今回のように、日本の総理が「何を言い、何を聞いたか」ではなく、テレビカメラに映った「振る舞い」ばかりを取り上げて批判的に報ずる姿勢は如何なものか、と思う。今回多くのメディアで問題視されたのは:
会合前は、各国代表と座ったまま握手
歓迎レセプションでは、腕組みをしながら鑑賞
閉幕集合写真撮影には、事故渋滞に巻き込まれた影響もあり、欠席
会議場では、1人でスマホを触っていた
通常は右手で握手をするところ、両手を添えた
などである。
これらに対しては:
国際会議では、初出席の総理大臣が挨拶に回るべし
外国首脳とは席を立って握手すべきだった
首脳会談の握手は右手だけ、というのが外交のルール
両手で握手すると下手に出ているように見える
国の代表としてマナー、教養、品性を欠いていた
周囲は外交上のマナーをレクチャーすべきだった
挙句の果てに、トランプと会えなかった
などなど、厳しい声が噴出した。批判したのは、首脳外交の現場を見たこともない評論家や政治部記者が多かったが、「よう言うわ!」というのが筆者の率直な気持ちだ。誤解を恐れず言えば、今回日本の首相が国際会議の場でもスマホを手放せなかったのは、「103万円の壁」などをめぐり国内政治情勢が緊迫していたからだ。
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