差別は紛争の母である(上) 「開戦の記憶」も語り継ごう その1
Japan In-depth / 2024年12月15日 22時10分
「日清・日露戦争、そして第一次世界大戦と、昭和初期までの日本は、一度も対外戦争に負けたことがなかったので、日本軍は世界一強いと信じ込んでいた」
といったような歴史観をどこかですり込まれている。
しかし、軍事や戦史についてある程度の知識を蓄えたなら、必ずしもそうではなかった、ということが分かるのである。
事実、真珠湾攻撃を立案した連合艦隊司令僚艦・山本五十六は、駐在武官として在米日本大使館に勤務した経験があり、常々、
「テキサスの油田とデトロイトの自動車工場を見ただけでも、日本が戦争して勝てる国ではないことが分かる」
と語っていた。
実は開戦の年、若手の秀才官僚たちを極秘裏に集めて「総力戦研究所」というものが立ち上げられ、日米もし戦わば、というシミュレーションを行った。結果は「敗戦必至」。この結果は時の近衛内閣に伝えられたが、戦争意思を覆すには至らなかった。このことは、後でもう一度見ることとする。
いずれにせよ日米の戦力差については、少なくとも海の上層部は正しく認識していたのに、開戦の決定が下されてしまった。
その背景には欧米列強に浸透していた(現在もなくなったとは見なしがたい)白人至上主義があった、と述べたなら驚かれるであろうか。
1904年に勃発した日露戦争で、日本海軍はロシアのバルチック艦隊を撃滅し、世界を驚かせた。しかしこのことは同時に、米国の政治家や軍人たちに、日本は将来、太平洋の覇権を争う相手になるとの考えを抱かせることにもなったのである。
また、1914年から18年にかけて第一次世界大戦において、日本は戦勝国に名を連ね、押しも押されもせぬ列強の一員となった。しかし同時に、戦争で疲弊したヨーロッパとは対照的に、戦時輸出で大もうけしたという、別の一面もあった。
「この戦争の収支が黒字となったのは日本だけ」
などと言われたのである。
これ以降、戦争の悲劇を繰り返さぬためにと、幾度も世界レベルで軍縮を目指す会議が開かれたが、米英は常に、日本の頭を抑えにかかっていた。具体的には、軍艦の保有数(総トン数)を、米英は10、日本は6に制限するとしたのだ。
これは非白人国家に対する差ではないか。そう考える人たちが現れたのも無理はない。
さらに言えば、当時米国に移民していた日系人は、ひどい人種差別にさらされていた。
単純な人種差別だけではなく、米国の白人に言わせれば、彼ら日本人は、善き合衆国市民になろうとせず天皇に忠誠を誓い続け、稼いだ金はどんどん日本に送金されている。もしも日本との間で紛争が起きたような場合、彼らは治安に対する脅威となる。
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