マクロン大統領、最後の切り札? バイル氏に託されたフランスの未来
Japan In-depth / 2024年12月16日 19時0分
バイル氏は、2014年3月にほぼ63%の得票率でポー市長に初当選し、その後、2020年にポー市長に再選されている。バイル氏がポー市長時代にも、マクロン氏との交流は続いていた。例えば、ポー市で、水素エンジンを搭載した18メートル車両を導入した世界初のバス路線が開通したときには、マクロン氏がポー市に駆け付けた。水素はエネルギーとして使うとCO2を排出せず究極のクリーンエネルギーと呼ばれており、EUでも次世代エネルギーとして期待されている。その未来の燃料で動く世界初のバス路線となれば、大統領が式典に参加するのは理解できる話だ。しかし、マクロン氏がポー市が開催する式典に参加したのはそれだけではない。その後も、ポー市の小さな文化センターの開幕式にまで参加しており、住民も「なぜこのような小さな式典に大統領が?」と首を傾げたほどである。その状況を見てもマクロン氏とバイユ氏の親密さがうかがえるだろう。
バルニエ政権では、国会と大統領の不和説、決裂説、マクロン大統領の孤立説などをメディアが書き立てた。第2次マクロン政権は、まだ任期5年の約半分を残している。大統領としては、国会との連携を固める必要がある。そういう意味では、バイル氏ほど適任の人物はいない。
実際、首相に任命された後のインタビューでも、大統領と国会の対立を否定していており、自分は、共和国大統領と「完全に連携し、補完性を持った首相」となると答えている。そして、「マクロン氏は、大胆さと勇気をもった人物」と評価した
■ フランスの大きな課題
政治経験も豊富であり、大統領と十分連携をはかれる人物が首相になったとはいえ、フランスが抱える大きな課題を解決していくことは並大抵のことではない。バイル氏もそのことは認識しており、インタビューでも、フランスが「ヒマラヤのようにそびえ立つ課題に直面していることを十分に認識している」と述べ、その上で、「何も隠さず、何も無視せず、何も脇に置かない」ことを誓っている。
バイル氏の目下の課題は、2025年度の予算案の成立だ。いかに、財政赤字を減らしていく予算案が建てられるかが重要点となってくる。バルニエ内閣の予算案では、財政赤字の対国内総生産(GDP)比率を今年の6.1%から5%に引き下げるために、社会保障の国の負担額を減らす案が盛り込まれていた。しかし、その案は野党からの大きな反対にあい、総辞職を余儀なくされたのだ。しかし、このままいけば、ムーディーズ・レーティングスの予想通り、今後数年にわたり財政が大幅に悪化していくだろう。それを食い止める案をだすことが求められている。
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