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震災復興と医療:いわき市の小児科医不足が突きつける課題

Japan In-depth / 2024年12月17日 19時59分

 小児科の医療体制は対照的だ。厚労省の「令和2年医師・歯科医師・薬剤師調査」によれば、いわき市の人口10万人あたりの小児科医数は5.7人。全国平均(11.4人)の50%だ。福島県の二次医療圏でも、最も少ない(図1,2)。


 









図1


出典)医療ガバナンス研究所









図2


出典)医療ガバナンス研究所


 いわき市が東北地方の中心都市であることは前述した。福島県内では福島市、郡山市と並ぶ三大都市だ。福島県立医科大学が存在する福島市を中心とした県北地域(18.5人)、郡山市を中心とした県中地域(12.7人)とは比べものにならず、過疎地域も含めた他地域よりも小児科医が少ないのは異様だ。


 いわき市内で小児科の入院を受け入れているのは、いわき市医療センター(旧称:いわき市立総合磐城共立病院)だけだ。4人の常勤医と5人の非常勤医で診療している。医師を派遣している東北大学によれば、年間の延べ3,181人の入院患者、1万8,278人の外来患者を診ている。これ以上の受け入れは難しい。


 いわき市内で子どもが入院が必要な病気になった場合、郡山の病院までいかねばならない。約80キロの距離で、高速道路を利用して約1時間を要する。これでは、子育て世代がいわき市を敬遠するのも仕方ない。


 福島県内に医師を供給するのは、福島県立医科大学の役目だ。同大学の小児科医局は、いわき市内に医師を派遣すべきだ。ただ、現実にはそれも難しい。


 それは福島県内の小児科医が少ないからだ。医療ガバナンス研究所の山下えりかは、厚労省の「令和4年医師・歯科医師・薬剤師調査」を用いて、15歳未満人口10万人あたりの小児科医数を推計した。全国平均は126人だ。最も多いのは鳥取県で188人。京都府166人、東京都165人、徳島県150人、香川県150人と続く。


 最も少ないのは山口県の94人で、千葉県94人、埼玉県102人、鹿児島県106人、愛知県106人と続く。福島県(117人)は下から14位だ。福島県の問題は、関東地方で小児科が不足していることだ。図2をご覧いただきたい。関東地方の小児科医不足が深刻なことがご理解いただけるだろう。福島県に小児科医を招聘するには、関東地方の都市と競争して勝たねばならない。


 本稿では詳述しないが、わが国の医師は西高東低の形で偏在している。これは明治維新に勝利した西国雄藩が地元に官立の医学部を優先的に設立し、東日本が後回しにされたためだ。わが国の近代史が影響しており、問題は容易に解決しない。


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