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震災復興と医療:いわき市の小児科医不足が突きつける課題

Japan In-depth / 2024年12月17日 19時59分

 どうすべきか。小児科医が多い関西以西から、小児科医を招聘すればいいとお考えの方もおられるだろう。ところが、これも現実的ではない。それは、西日本でも小児科医は不足しているからだ。私は、「うちは小児科が余っている」という西日本の医療関係者と会ったことがない。


 「少子化が進むわが国で、小児科医を増やしても意味がない」とお考えの方もおられるだろう。果たして、本当にそうなのだろうか。図3をご覧いただきたい。2021年の経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国の人口10万人あたりの医学部定員数を示している。日本は7.3人。OECD加盟国中、イスラエル(6.8人)、韓国(7.3人)に次いで少ない。トップのラトビア(27.6人)の4分の1だ。









図3


出典)医療ガバナンス研究所


 最近、韓国は政府が主導する形で医学部定員を大幅に増員することを決めたため、早晩、日本は二番目に少ない国となる。これが日本の小児科医不足の背景だ。日本は世界でもっとも高齢化が進み、医療需要が大きな国だ。ところが、医師養成数が世界最低レベルだ。これで医療体制が維持できる訳がない。これまでは、医師の過剰残業で辻褄を合わせてきたが、働き方改革が施行され、このやり方を続けることは難しくなった。


 これは厚労省による「人災」と言っていい。長年にわたり、厚労省は「将来的に医師は余る」と主張し続けてきた。2006年に発表した「医師需給に関する検討会」の報告書では、2022年には臨床に従事する医師数は必要とされる数を超え、その後、過剰になると報告していた。当時から、日本の医師の養成数は国際的に極めて少ないのだから、常識的にこんな事はありえない。


 ところが、このことを批判するメディアや有識者は少ない。最近は、医師偏在の理由を「若手医師が都市での勤務を希望するから」「美容医療に進む若手医師が増えたから」と責任を転嫁している。これでは、いつまで経っても問題は解決しない。


 いわき市の小児科医不足は、日本の医療政策の宿痾の象徴だ。厚労省、日本医師会など医療提供者が「密室」で議論し、彼らの都合が優先されてきた。その結果、いわき市は「放置」された。


 日本の医師は絶対数が不足し、偏在している。この問題を改善するには、東日本に医学部を新設するのが妥当だろう。地域の医師が充足して、はじめていわきの小児科医も増やすことができる。この問題は、患者・住民視点にたち、もっと合理的に議論すべきである。


トップ写真:赤ちゃんを診察する小児科医(イメージ)


出典:iStock / Getty Images Plus


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