北朝鮮「終わりの始まり」か(下)【2025年を占う!】朝鮮半島情勢
Japan In-depth / 2024年12月24日 15時48分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・北朝鮮がロシアのウクライナ侵攻に派兵する一方、兵士や軍需物資が「消耗品」として扱われ、国内外で不満が高まっている。
・軍事技術供与や経済的見返りはあるものの、兵士や家族の怨念、そして高級軍人の不満が金王朝への反感を生む可能性がある。
・2025年に体制崩壊の可能性は低いものの、独裁政権の終焉に向けた兆候が着実に現れている。
前回の冒頭でも述べたことだが、2025年が北朝鮮にとって「終わりの始まり」になるのではないかと私が考えざるを得ない第二の根拠は、ロシアによるウクライナ侵攻に北朝鮮が加担し、ついには派兵に踏み切ったことである。
時空列を少しだけ振り返ると、ウクライナでの戦役が泥沼化していることがいよいよ明らかになった23年9月、プーチン大統領は金正恩総書記を極東ロシアに招き、会談した。
この会談において、北朝鮮が軍需品をロシアに融通し、見返りに食料援助などを受けるとの密約が交わされたことは、疑う余地がない。
事実、この年の暮れには、北朝鮮からは砲弾、ロシアからは小麦が互いに供与されたのだが、本連載でも述べた通り、砲弾は信管がまともに作動しない(つまりほぼ確実に不発となる)欠陥品ばかりで、一方、小麦は消費期限切れであったという、笑えないオチがついた。
これに懲りたというわけでもないだろうが、2024年9月に、今度は金総書記がプーチン大統領を招き、この時の会談では「包括的戦略パートナーシップ」が締結された。
これはれっきとした軍事同盟で、簡単に述べれば、どちらかが戦争を始めた場合は一緒に戦うという協定である。
今次の派兵もこの協定に基づいたものと見られているが、その前に北朝鮮からは、最新の自走対戦車ミサイルなどが供与された。この兵器によって、英国製AS90自走榴弾砲が破壊されたとの情報もある。
そして、10月上旬までには、1万人程度の北朝鮮兵がロシア領内に入ったと米韓の軍事情報筋などが明らかにした。
当初は、派兵されるのは「暴風軍団」と称される精鋭だとされていた。いざという時には軍事境界線を越えて韓国内に侵攻する尖兵となるべく編成された特殊部隊である。
ただ、彼らがウクライナでの戦役に投入されたからと言って。戦局を大きく変えるゲームチェンジャーにまでなり得るかは疑問であると、西側軍事筋では見ていた。
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