「日本の専守防衛は危険」 ウクライナ戦争の教訓
Japan In-depth / 2024年12月27日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・ウクライナ戦争は新兵器や戦術で防衛態勢を変化させた。
・戦争研究所(ISW)の所長は日本の安全保障を警告している。
・ロシアと中国の協力が国際秩序を脅かしている。
ウクライナ戦争がアジア太平洋地域、とくに日本の安全保障にどんな意味を持つか――こんな点をいまのウクライナへのロシア軍の侵略の戦況について全世界でも最も引用されることの多いアメリカの有力シンクタンク「戦争研究所(ISW)」の所長に尋ねた。同所長の多様な回答のなかでも、とくに印象に残ったのは、ウクライナ戦争での新型の兵器や新式の戦術戦略が近代の戦争の性格を根底から変化させ、その極めて高い攻撃性や致死性は、防衛にまず専念するという日本の「専守防衛」策をかえって弱体かつ危険な安全保障態勢にしている、という警告だった。
ワシントン所在の戦争研究所(ISW)は現在のウクライナ戦争についてのその情報や分析を全世界のメディア、研究者、調査機関などにより引用、使用される頻度がきわめて高いことで知られるようになった。日本でもメディアだけでなく、政府関連の研究機関までが「ワシントンの戦争研究所によると」という形でその最新情報を転用している。
ISWは2007年にワシントンで国際軍事・政治専門の女性学者キンバリー・ケーガン氏により創設された。イラクやアフガニスタンでの戦闘に関し、公開情報だけに頼るという独特の手法で正確な情勢把握を公表してきた。ウクライナについてもロシアの2014年、22年の両侵攻での戦闘の分析で「全世界でも最も頻繁に引用される研究機関」と評されるようになった。
ケーガン所長はこの12月上旬、ウクライナ戦争のアジア太平洋地域への影響などの調査と研究のために日本財団の招きで来日した。日本側の安全保障分野での官民の専門家らと会見を重ねる日程のなかで筆者(古森義久)とも単独の会見に応じて、見解を語った。
ケーガン所長はウクライナ戦争のアジア太平洋や日本に対する影響については以下の骨子を語った。
「ロシアが中国、イラン、北朝鮮の協力を得て、単にウクライナの制覇だけでなく、アメリカ主導の国際秩序の破壊を目指すという点で日本やその他のアジア太平洋でのアメリカの同盟諸国、同志諸国への影響は巨大だといえる」
「中国の習近平主席が『ロシアに同調し、まずアジア太平洋での米側の安保態勢を崩し、覇権を確立し、台湾の武力統一を国家目標としている』と述べている以上、日本への中国の軍事脅威は現実的だ」
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