国連幻想を解析する(下)明石康氏への非難
Japan In-depth / 2025年1月15日 11時0分
国連自体の大規模な汚職も指摘されてきた。
1995年に国連が始めたイラクのための「石油・食料交換プログラム」をめぐる不正もその実例だった。このプログラムは湾岸戦争で敗れ、困窮したイラクの国民救済のために国連がイラクの石油を管理し、その販売金で食料を買って、イラク国民に配給するという骨子だった。その予算は総額640億ドルにも達した。
しかしそのうちの200億ドルもが不正に流用されていたことが国連自体の調査で判明した。国連事務次長の1人までがその不正にかかわっていたことが公表された。
さらに古い事例だが、国連の専門機関ユネスコ(国連教育科学文化機関)での不正も全世界に伝えられた。この機関の最高責任者の事務局長に1974年、アフリカのセネガルの教員出身アマドゥ・マハタル・ムボウという人物が就任した。以来、10数年、ムボウ事務局長は公的資金の流用や縁故人事など大規模な不正行為を働いた。国連当局がユネスコ本部に監査を実施しようとすると、同本部は不振の火災が起きて、ほぼ全焼した。アメリカ政府はこの不正に抗議してユネスコを脱退したほどだった。
以上のように国連は「平和の殿堂」などという呼称からはほど遠いのである。大量殺戮を防ぐ能力にも欠けるのだ。日本での国連認識は現実をまずみてから決めねばならないのである。国連への幻想は捨てねばならないのだ。
*この記事は月刊雑誌WILLの2025年1月号に掲載された古森義久氏の論文を一部、書き直しての転載です。
トップ写真:スレブレニツァ虐殺(1995年7月11日)から10周年を祝う大規模な葬儀準備の様子。スレブレニツァ、ボスニア・ヘルツェゴビナにて 出典:Marco Di Lauro/Getty Images
(終わり。上、中はこちら)
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