安っぽい陰謀論がはびこる国(下) 陰謀論とデマは双子の兄弟 最終回
Japan In-depth / 2025年2月1日 18時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・ネットで拡散される「財務省黒幕説」は、安倍晋三元首相射殺事件と財政法第4条を関連付けている。
・竹内英明氏の自殺は、誹謗中傷やデマがSNS上で拡散された結果とされ、立花孝志氏の発言が問題視されている。
・SNS利用のモラル見直しが必要であり、情報発信者と受け手双方が倫理意識を持つことが求められている。
本題に入る前に、前回の最後の方で触れた、安倍晋三元首相射殺事件にまつわる「財務省黒幕説」をもう少しだけ見ておこう。
ネットの一部に流布しているのは、財務省が増税を繰り返すのは、戦後GHQ(占領軍総司令部)が押しつけた財政法第4条のせいだ、という奇妙な言論だ。
「国民の90%はこの条文の存在すら知らない」
などと珍説、もとい、親切にも解説動画をYouTubeに上げてくれた人までいる。なんでもこれは、憲法第9条ともども、日本の再軍備を阻止するための政策であったとか。
たしかに財政法4条は、戦時中に膨大な戦時国債の発行が行われた事への反省を踏まえて制定されたものであり、条文はこうだ。
「国の歳出は、公債や借入金以外の歳入で賄う必要がある」
これを受けてくだんの投稿主は、
「ここまで厳しい財政規律を法律で定めている国など、先進国の中に見当たらない」
とまで言ってのける。
私は正直、この投稿主の知能を疑った。まず、前述の条文の続きには、こうある。
「ただし、公共事業費、出資金、貸付金の財源については、国会の議決を受けた金額の範囲内で公債や借入金を発行できる」
この条文の存在自体は、90%の国民は知らないとしても不思議はない。しかし、日本の国債発行残高が税収の20年分にもなることは、大多数の国民が知っているのではないか。これは、憲法第9と並べてみれば、むしろ分かりやすい。9条2項において、
「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」
と明確に定められているにもかかわらず、解釈改憲が繰り返された結果、今の日本は世界有数の軍事大国になっている。そして同時に、世界でもワーストクラスの債務国である。
国債は果たして借金なのか、という議論はあり得ても(現実にある)。財政法4条があるせいで財政出動が許されない、だから財務省は二言目には増税を唱える、などとは、問題のイロハのイも知らない人が言うことである。
ましてや、どうしてこの問題が、安倍首相射殺事件の裏に財務省の影がちらつく、などという話になるのか。
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