【エンタがビタミン♪】松本隆、日本の音楽界を変えた2度の挑戦 「友達が離れ孤独だった」
TechinsightJapan / 2017年2月19日 15時1分
“日本語ロック”という表現さえ見かけない昨今だが、レコードは洋楽の方が売れて「ロックは英語」が当然だった時代に「日本語で歌うロック」の地盤を作った1人が松本隆である。さらには歌謡曲の作詞にそれまでにない描写や手法を取り入れ“歌謡曲”と“J-POP”の距離を縮めた。そんな大きな影響を2つも及ぼしながら、陰では「自身との葛藤」や「激しい孤独感」を覚えたという。
松本隆と斉藤由貴が2月16日放送のNHK Eテレ『ミュージック・ポートレイト』で対談した。そのなかで松本が大学を中退して細野晴臣(ベース)や小坂忠(ボーカル)など5人で結成したロックバンド「エイプリル・フール」がアルバム『Apryl Fool』(1969年9月)をリリースした頃を振り返った。その時すでにバンドは「ロックを英語で歌うか日本語で歌うか」で対立しており「あっという間に口もきかないくらい険悪なムードなって、発売と同時に解散した」と明かす。
「世界で勝負するには英語で歌うべき」という英語派に対して、松本は「ロックは日本語で歌うべき」と主張していた。彼は当時の考えを次のように説明する。
「頭の中でいちいち翻訳していたらそれでスピードが落ちる。ロックビートなんて100分の1秒や2秒の差でグルーヴがあるとかないとか違ってしまう。翻訳するのに(頭脳の)回路を通すだけでもう遅れちゃう。」
「生まれた時から頭の中で鳴っている言葉で歌った方が一番よい。その方がロックっぽい。」
記者はミュージシャンによる素晴らしいパフォーマンスから常々「音楽とは人間が時間を操ることで生み出す芸術」だと感じるが、演奏だけでなく「翻訳するために回路を通す間に遅れる」というところまで掘り下げた松本はやはり凡人ではない。
その後、松本は同じ日本語派だった細野とともに大瀧詠一、鈴木茂とバンド「はっぴいえんど」を結成する。「ロックのサウンドに日本語をのせる」ことを目指す松本が日常風景を描写した歌詞に大瀧が曲をつけ、2人にとって初めての合作『12月の雨の日』や『春よ来い』などを含む1stアルバム『はっぴいえんど』を発売したのは1970年8月だ。
しかしながら、当時巻き起こった“日本語ロック論争”で内田裕也ら英語派から「『春よ来い』は歌詞とメロディとリズムのバランスが良くない…」と酷評される。それを受けて「日本語のロックは俺が作る」とさらに燃えた松本は、細野晴臣が曲をつけた『風をあつめて』を発表し、同曲を収めた2ndアルバム『風街ろまん』(1971年11月)は高い評価を受ける。
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