【海外発!Breaking News】偽造ライセンスで20年以上働いたパイロット 航空関係者も「なぜ気付かないのか」(南ア)

TechinsightJapan / 2019年3月13日 15時49分

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世界中でパイロットの飲酒運転が多発して問題になっているが、南アフリカではあるパイロットが偽造ライセンスで20年以上も働いていたことが発覚した。『Mail & Guardian』など複数のメディアが伝えている。

パイロットの偽造ライセンスが発覚したのは、ある事故の調査をしている過程だった。2018年11月、ヨハネスブルグ国際空港からドイツのフランクフルト空港へ向かった南アフリカ航空SA206便がスイス上空で起こした事故に関して、南アフリカ航空(SAA)は“報告せざるを得ない事案”であるため調査を進めていた。こうした事故が発生した場合、航空会社は事故原因を調査し、今後の運行改善や事故に対する懲罰などを行わなければならない。

その調査時、ウィリアム・チャンドラー副操縦士(William Chandler)の定期運送用操縦士免許が偽造であることがわかった。チャンドラーは航空会社で副操縦士として勤務するのに必要な事業用操縦士の資格しか持っていないにもかかわらず、操縦士のトップである定期運送用操縦士免許を取得していると長年にわたり嘘をついていたのだ。

南アフリカ航空によると「11月の飛行中、客室乗務員ですら理解できないような異常な旋回が何回かあった」とのこと。ドイツに着陸後、安全報告をしなければならなくなり、チャンドラーが操縦した“異常な旋回”によって機体に問題が起こったことがわかった。事故について調べを進めていたドイツ当局が、チャンドラーに「免許が偽造ではないか」と問い詰めると強く否定していたというが、彼は機長として操縦する資格を持っていなかった。

20年以上も勤務するベテランパイロットの免許が偽造であることが発覚し、航空会社は焦ったのであろう。その後、事故自体が表沙汰になることはなかった。しかし「なぜこの件だけ公表されないのか」と他の従業員が訴えたことで、チャンドラーの不正行為が明らかになった。

定期運送用操縦士免許はパイロット免許の中でも最高の資格である。取得するためには、筆記試験だけでなく身体検査に合格し、トータルで1500時間(うち夜間飛行100時間)の飛行が必要で、定期運送用操縦士の免許取得における費用は15万ランド(約116万円)にも上る。また社内でも高給の部類に入り、一番経験が浅い者でも年間90万ランド(約700万円)、上級パイロットになると年間600万ランド(約4600万円)の給料が支払われる。また、限られた家族だけしか航空運賃が無料にならないという他の職員と違い、パイロットは親族を含む家族の航空運賃が無料になるという特典もある。

南アフリカの航空会社では、パイロットは雇用から5年以内に定期運送用操縦士免許を取得しなければならず、それができない場合は雇用が取り消される。チャンドラーは1994年に南アフリカ航空にパイロットとして入社したが、それ以前は航空機関士として働いていたという。彼は1999年までに定期運送用操縦士免許を取得しなければならなかったことになるが、実際には取得していなかった。南アフリカ航空は、チャンドラーが定期運送用操縦士免許を取得したと主張を始めた時期について公表する立場ではないとしており、なぜ彼がパイロットとして勤務を続けることができたのかについても明らかにしていない。

内部の情報によると以前、チャンドラーには不可解な行動があった。チャンドラーと同じ時期に入ったパイロットたちは2005年に機長に昇格したが、チャンドラーは昇級を拒否したために副操縦士のままであったという。昇級のプロセスで操縦士免許を提出しなければならず、この時点で誰かが怪しいと思えばよかったのだが誰も気づかなかった。

なおチャンドラーは、ライセンスが偽造であると判明した直後に退職している。また南アフリカ航空は、チャンドラーの偽造ライセンスが発覚した後にその事実を隠蔽しようとした安全管理者を停職処分とした。

一方、業界内部では航空会社や南アフリカ民間航空管理局(SACAA)もなぜチャンドラーの偽造ライセンスに気付かなかったのか疑問視している。パイロットは操縦技能審査や身体検査などで毎年免許を更新する必要があるからだ。

南アフリカ航空では現在、偽造ライセンスによってチャンドラーが稼いだ金額を算出しており、その額は福利厚生も含め数千万円になるだろうとみられている。しかし航空会社は詐欺被害としてチャンドラーを訴えることはせず、社内の免許管理の強化に努めると述べている。

画像は『Mail & Guardian 2019年3月1日付「Fake SAA pilot flew under radar」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 FLYNN)

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