オーストラリアCSIRO発クリーンテック企業へ大阪ガスなどが出資(オーストラリア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月16日 10時20分
オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は11月26日、CSIROのスタートアップで集光型太陽熱(Concentrating solar thermal:CST)技術をもつ企業のFPRエナジー(FPR Energy)が1,500万オーストラリア・ドル(約14億5,500万円、豪ドル、1豪ドル=約97円)のシード資金を調達したと発表した。大阪ガスは、同国のコンサルティング大手のRFCアンブリアン(RFC Ambrian)とともに出資する。
FPRエナジーは、CSIROで開発されたCST技術の商業化を目指すスタートアップ企業で、2023年に設立された。ニューサウスウェールズ州ニューカッスルのCSIROエネルギーセンタ-に拠点を置いている。特殊な鏡を用いて太陽光を集光、セラミック粒子を活用して熱に変換、その熱を長時間貯蔵したり、蒸気へ変換したりして、産業向けの熱源としての利用などが可能になる。CSIROによると、最高で1,200度という高温で蒸気エネルギーを生成できるCST技術は業界初だという。今後は同技術を活用して、50メガワット(MW)の実証プラントの開発を予定している。実証プラントには、最大16時間エネルギーを貯蔵できる設備も設置する予定だ。FPRエナジーは同技術を使って、脱炭素化が困難な鉱物資源の精製工程や、鉄鋼、セメント、化学製品など重工業の製造工程の排出量削減を目指すとしている。
また、北米や南米、中東、アフリカなど太陽光が豊富な地域にこの技術を拡大する計画だ。大阪ガスは同日付のプレスリリースで、同社が知見を有する高効率で環境負荷の低いガスコージェネレーション(注)や、ガスボイラーと組み合わせるなど、エネルギー供給安定性への協力を実施すると発表した。
CSIROの技術研究ディレクターのダニエル・ロバーツ氏は「FPRエネルギーの取り組みは、排出削減が困難な産業で、再生可能エネルギーを活用した解決策の糸口となるものだ」「オーストラリアの豊富な太陽光資源の活用方法を多様化することは、低炭素経済に貢献し、地元ハンター地域の経済成長と雇用創出を支援することになるだろう」と述べた。
なお、CST技術に関連する案件としてはほかに、ビクトリア州のペットフード製造施設へのCSTプラント設置計画があり、連邦政府が資金支援を行うことを発表している(2024年11月11日記事参照)。
(注)ガスコージェネレーションとは、ガスを燃料として発電し、この時に生じる熱エネルギーも蒸気や温水に変えて利用するシステム。
(青島春枝)
(オーストラリア)
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