米アップル、東南アジアでの製造拡充を検討、人材育成も支援(ベトナム、インドネシア、シンガポール、米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月1日 0時0分
米国アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は4月15日から19日にかけて、ベトナム、インドネシア、シンガポールを歴訪した。各国で政府代表と会談し、サプライチェーンや人材育成支援などに関する議論を行った。東南アジアでの製造拠点拡充と成長市場開拓を目指した動きとみられる。
クックCEOは16日にベトナムのファム・ミン・チン首相とハノイで会談した。チン首相は同社サプライヤーを含め、生産拠点としてベトナムへの投資を拡大するようクックCEOに要望した。併せて、それを支援するための作業部会を設立する用意があると話した。これに対して、クックCEOは、アップルはベトナムで20万人以上の雇用を創出するとともに、2019年以降、約160億ドルを投入していると説明。チン首相提案の作業部会と協力の上、同国への投資活動を拡大していく方針を示した。また、環境保護や教育・職業訓練の支援も拡大していくと説明した。チン首相も、アップルが求めるクリーンエネルギー調達をしやすいよう、直接電力購入契約(DPPA)などの国内整備を推進していくと約束した。
翌17日には、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領とジャカルタで会談した。クックCEOは、ジョコ大統領から製造拠点の設置要請を受けたとし、同国での製造も検討すると話した。会談に先立ち、アップルは開発技術者の養成校「アップル・デベロッパーアカデミー」のインドネシア4校目をバリ島に開校することを発表した(4月16日付アップルプレスリリース)。
19日には、シンガポールの次期首相に内定しているローレンス・ウォン副首相兼財務相(注)と会談した。これに先立ち、アップルは2億5,000万ドル以上を投資し、同国アンモキオ地区にある自社キャンパスを拡張する計画を発表した(4月17日付アップルプレスリリース)。シンガポールはアップルにとって中心的なオペレーションセンターで、ソフトウエア、ハードウエア、サービス、サポートで重要な役割のハブになっているという。今回の拡張投資によって、人工知能(AI)人材を中心とした雇用創出の増加が期待される。なお、シンガポールの同社施設は全て再生可能エネルギーで運営されるなど、カーボンニュートラルに向けた取り組みも進んでいる。
(注)ローレンス・ウォン副首相兼財務相は5月15日付でリー・シェンロン首相に代わり、シンガポールの首相に就任することが発表されている(2024年4月17日記事参照)。なお、当初はリー・シェンロン首相もクックCEOと会談する予定だったが、インフルエンザのために中止となった。
(庄浩充)
(ベトナム、インドネシア、シンガポール、米国)
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