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スイス連邦参事会、初めての国家水素戦略を承認(スイス)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月19日 0時15分

スイス連邦参事会(内閣に相当)は12月13日、国家水素戦略(フランス語)を初めて承認した。水素、電力を水素やその他のエネルギーのかたちにして貯めて使うPower-to-Xでの連邦参事会の指針と目的を定義するもので、連邦参事会が2023年11月に採択した報告書「水素、スイスの現状と選択肢」(フランス語)に基づく。

水素とPower-to-X誘導体(合成メタンや合成メタノールなど、水素から生産される気体、または液体のエネルギーキャリア)は、2050年までに化石燃料を使用しないエネルギー供給に大きく貢献できる柔軟なエネルギーキャリアだとし、水素戦略はこのために必要な枠組み条件を作り出す内容だ。前提条件は、炭素中立的な生産プロセスからの水素を使用すること。水素は、熱プロセスやバックアップ発電所、航空、船舶などの経済的・環境的に意味のあるところで使用する必要があるとしている。

また、国内生産と貯蔵に加え、欧州の水素輸送ネットワークへの接続を確保し、国際協力とパートナーシップを通じて輸入を強化する必要がある。水素インフラは、バリューチェーン全体(生産、加工、輸送、貯蔵、自動車への燃料補給インフラ)にわたって整備され、スイスの教育・技術革新クラスターは水素技術の開発によって強化する必要があるとしている。

水素戦略では、スイスの水素需要は2030年代半ばまで低いと想定しており、それまでは国内生産でほぼ賄われることを見込んでいる。既存の発電所での水素製造や、水素製造地での直接消費、他の場所への輸送も可能とし、新規または再開発されたパイプラインの整備のほか、陸上輸送も想定している。2035年までに欧州の輸送・流通インフラが十分に整備され、スイスへの輸入が可能になると予測している。貯蔵のため、大規模なガス貯蔵庫が必要となるほか、水素を液体の合成エネルギーキャリアに変化させる必要があるとした。

国内需要は2035年以降増加することを見込み、長期的には国内生産よりも、EUや第三国からの輸入の方がメリットは高く、輸入水素の割合は増加し続けると予想している。しかし、需要動向に関しては不確実性が残る。

水素戦略ではさらに、国内の水素市場の発展と欧州市場との連携に向けた対策も勧告している。連邦環境運輸エネルギー通信省(DETEC)と財務省は、州やガス輸送パイプラインの所有者と協力して、2025年末までにガス輸送パイプラインを欧州水素ネットワークに接続するための財政保証を付与する必要性と可能性を検討する。

スイスの水素市場の発展は今後、熱エネルギー戦略2050(2023年1月31日記事参照)の監視と、DETECの将来のエネルギー見通しに反映されることになる。DETECはまた、国道沿いの大型貨物車両交通管制センター内の適した場所を水素ステーション運営者に提供する構想も進めている。エネルギー貯蔵施設の設置問題は連邦政府、州、エネルギー部門の代表者による円卓会議で議論される予定。

(田中晋)

(スイス)

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