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ジェトロ、欧米の人権関連法制と企業実務のウェビナー開催(EU、米国、日本、世界)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月23日 16時5分

ジェトロは1月16日、欧米の人権デューディリジェンス(DD)法制を巡る最新動向や、日本企業に求められる「ビジネスと人権」の実務、グッドプラクティスを解説するウェビナーを開催した。

開会あいさつとして、経済産業省通商政策局ビジネス・人権政策調整室長の小川幹子氏が、あらゆる日本企業が人権尊重を企業経営の軸に組み入れる重要性を強調するとともに、国や企業が双方で取り組みを進めていく必要性を述べた。

講演ではまず、ジェトロ調査部欧州課の安田啓課長が2024年7月に施行したEUの企業持続可能性デューディリジェンス指令(CSDDD、注1)について、対象企業と対象範囲や、企業活動による人権や環境への悪影響を予防・是正する義務 (デューディリジェンス)の内容などについて解説した。また、ジェトロによる調査の結果を基に、在欧日系企業への影響や取り組みの現状、課題についても説明した(注2)。

次に、ジェトロ調査部米州課の甲斐野裕之リサーチ・マネージャーが、米国の(1)関税法307条による強制労働製品の輸入禁止、(2)ウイグル強制労働防止法(UFLPA)に基づく措置について解説し(注3)、在米日系企業の取り組み状況を紹介した。

続いて、TMI総合法律事務所の戸田謙太郎弁護士が、(1)人権方針の策定(2)人権DDの実施(3)救済メカニズムの構築(4)社内の体制構築の各ステップについて、具体的な企業実務やアプローチ事例を含めて解説した。

日本たばこ産業(JT)執行役員兼Chief Sustainability Officer(CSO)の妹川久人氏は、JTグループの人権尊重の取り組みについて発表した。優先的に取り組むべき「顕著な人権課題」として、児童労働など9項目を特定するとともに、一連のPDCAプロセスを継続(1.浸透、2.特定と優先順位付け、3.対処、4.効果の測定、5.開示)することで、体系的かつ効果的な取り組みを実施していることを示した。また、JTグループが葉たばこを調達しているアジア、アフリカ、南米諸国の農家の子どもたちに就学機会を提供することで、葉たばこ耕作コミュニティーの児童労働の防止・撲滅につなげる「ARISE」プログラムを紹介した。

最後のパネルディスカッションでは、ジェトロ調査部の中畑貴雄主任調査研究員がモデレーターを務め、登壇者5人が活発に議論した。大企業に比べて中小企業の取り組みが進んでいない現状を踏まえ、経済産業省の小川室長は、中小企業などの人権DD実施を支援するため「『ビジネスと人権』(BHR)推進社労士の養成に取り組んでいるほか、今後は大企業とそのサプライヤー企業による対話ワークショップを計画している」と述べた。妹川CSOからは、取り組みの継続には事業部門やサプライヤーに前向きな働きかけを行い、「コストではなく将来への投資」という意識や、内発的に取り組むマインドセットを持ってもらうことが重要とのコメントがあった。

なお、このウェビナーの動画は、1月23日からアーカイブで配信している。

(注1)2024年7月25日施行。施行後2年以内に実施される各加盟国による国内法化を経て、2027年7月から段階的に適用される(2024年5月28日記事参照)。

(注2)詳細は、ジェトロ2024年度海外進出日系企業実態調査(欧州編)参照。

(注3)米国の「サプライチェーンと人権」に関する法制化の概要や最近動向については、ジェトロ調査レポート「サプライチェーンと人権」に関する法制化動向(米国編)(2024年11月)参照。UFLPAの概要や最新動向は、ジェトロ特集「ウイグル強制労働防止法」参照。

(川嶋康子)

(EU、米国、日本、世界)

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