中東(西アジア)の経済成長率、2024年2.0%、2025年と2026年は3.5%、国連予測(中東、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、イスラエル、レバノン、トルコ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月15日 9時0分
国連経済社会局は1月9日に発表した報告書「2025年の世界経済情勢と展望」で、中東(西アジア、注)の経済成長率は、地域情勢の悪化など地政学的な動きや石油収入の減少などにより、2024年は2.0%の成長との見通しだ。一方で、石油生産が徐々に増加し、2025年には3.5%に加速し、2026年も3.5%を維持するとの予測を示した。なお、2025年の世界の成長率は2.8%にとどまり、中東が世界を上回る見込みだ。
主要国ではプラス成長、情勢悪化でマイナス成長の国も
2025年の中東の国別成長率をみると、アラブ首長国連邦(UAE)が4.8%、サウジアラビアが4.4%と高い。中東主要国の2025年の成長率予測値は次のとおり(かっこ内は2026年の数値)。
サウジアラビア:4.4%(3.5%)
トルコ:3.1%(3.5%)
イスラエル:3.8%(2.9%)
UAE:4.8%(5.0%)
イラン:3.2%(3.3%)※南アジアに分類
イラク:2.8%(2.1%)
カタール:2.4%(4.2%)
なお、日本は2025年に1.0%、2026年に1.2%にとどまり、低成長の予測だ。
一方で、2025年の成長率は、武力衝突が激化したレバノンではマイナス2.0%、政権崩壊したシリアではマイナス0.5%となるほか、イエメンでもマイナス0.3%とマイナス成長が見込まれる国もある。イエメンでは、フーシ派が紅海周辺での商船攻撃を続けているが、同国内で貧困と食糧不安のレベルが⾼まっている。
同地域の地政学的な動きについては、ジェトロの特集「イスラエルとハマスの衝突に関する動き、各国の反応」やジェトロの地域・分析レポート「地政学的影響を踏まえた中東・アフリカの物流動向」を参照。
財政赤字は拡大、物価上昇は緩和
同報告書によると、中東各国の財政⾚字(GDP比)の平均は、2024年の1.9%から2026年には2.6%まで拡大するとの予測だ。石油収入の減少に加えて、エネルギーと食糧に関する補助金、経済多様化に関する支出が増加するという。サウジアラビアとバーレーンは、非⽯油部⾨への投資の増加により、2025年と2026年は財政⾚字となるが、カタールは安定した天然ガス生産と新市場への輸出により、財政黒字を維持するとの見通しだ。
また、中東の消費者物価上昇率は、2024年に21.2%、2025年に15.9%、2026年には8.9%まで緩和する見込みだ。なお、2024年の物価上昇を見ると、中東の石油・輸出国では2.2%と低かったが、石油・ガス輸入国では45.3%と高騰しており、物価上昇の差が顕著に出た。特にトルコは60.0%と高かった。
なお、中東と関係の深いエジプトやモロッコなどアラブ諸国を含むアフリカの成長率は、2025年に3.7%の予測だ(2025年1月10日記事参照)。
(注)同報告書での「西アジアの分類」は、バーレーン、イラク、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、イエメン、イスラエル、ヨルダン、レバノン、パレスチナ、シリア、トルコの14カ国・地域が含まれる。同報告書の分類ではイランは南アジアに含まれる。
(井澤壌士)
(中東、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、イスラエル、レバノン、トルコ)
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