ギリシャ、EU排出量取引制度を財源に「島嶼部脱炭素化基金」設立(ギリシャ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月26日 1時10分
ギリシャ環境・エネルギー省、欧州委員会、欧州投資銀行の間で11月21日、3者協定が締結され、「ギリシャ島嶼(しょ)部脱炭素化基金」が設立された。
この基金は、EU排出量取引制度(EU ETS:EU Emissions Trading System)により最大2,500万の排出枠をオークションにかけて得られる売却益を財源とし、ギリシャの島しょ部のエネルギーシステムの脱炭素化に活用する。ギリシャ環境・エネルギー省の発表によると、現行の排出量取引価格をベースとする基本シナリオでは初期の財源は16億ユーロと推定され、2025年から2032年までにこの基金全体で38億ユーロの投資が見込まれている。また、排出量取引価格の上昇予測を考慮すると、今後2年間でギリシャの排出枠がオークションにかけられる際には、さらに財源や投資が増額する可能性もある。
島嶼部脱炭素化基金は、次の3つの主要な柱を基盤として構成される。
1. 再生可能エネルギー(再エネ)の新規設備(総予算の51%):島しょ部における再エネおよび蓄電システムの開発。住宅や企業による自家消費を目的とした小規模な投資だけでなく、再生可能エネルギーと蓄電システムを組み合わせたハイブリッドエネルギー生産システムなどの大規模な投資も含まれる。さらに、洋上風力発電開発への資金援助にも重点が置かれる。
2. 島しょ間の送電網の相互接続(総予算の40%):ドデカニサ諸島やキクラデス諸島などの島嶼間送電網の相互接続。
3. 再エネの普及拡大のための設備(総予算の9%):島しょ部における、湾港停泊中の船舶へのエネルギー供給システム(コールドアイロニング)の開発、電気自動車の充電インフラ開発、発電と貯水を目的とした貯水池の建設プロジェクトなど。
キリアコス・ミツォタキス首相は「島嶼部における脱炭素化や安価な電力供給は、島嶼部の発展の鍵となり、観光産業の活性化やギリシャが目指すグリーン経済にとっても重要」とコメント。また、テオドロス・スカイラカキス環境・エネルギー相は「このスキームの下で実施される再エネプロジェクトにより、現在、化石燃料による電力供給に大きく依存しているギリシャの島々は、豊富で安価なクリーンエネルギーを利用できる。プロジェクトの全期間を通じて、二酸化炭素(CO2)排出量削減は最大1,500万トンに達する可能性がある」と期待を込めた。
欧州委員会のマレシュ・シェフチョビチ委員(通商・経済安全保障担当)は「本協定はギリシャの島しょ部の脱炭素化への投資資金調達において重要な節目。欧州委員会は、気候変動政策が公正なエネルギー転換と産業競争力に沿うものであることを保証すべく、ギリシャを継続的に支援していく所存」とコメントした。
国際エネルギー機関(IEA)のデータベースによると、ギリシャにおける2023年の電源別発電量は約半分が化石エネルギーで、その中でも天然ガスが全体構成比の約3分の1を占める。2010年と比較すると、石炭・石油の構成比は64.3%から15.0%へ減少し、再エネは18.6%から51.1%へ増加している(添付資料表参照)。
(井上友里、山本千菜美)
(ギリシャ)
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