トランプ米政権発足や地政学リスク、見直し進むグローバル戦略、2024年度日本企業の海外展開調査(世界)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年2月4日 15時0分
ジェトロは2月4日、「2024年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」の結果を発表した。調査は2024年11月6日~12月6日、海外ビジネスに高い関心を有する日本企業(注1)を対象に実施し、3,162社から回答を得た(うち中小企業2,701社)。
市場、投資先として存在感増す米国
2024年の輸出見通し(数量ベース)について、回答企業の半数(50.0%)が2023年比で「増加する」と回答した。今後3カ年度で最も重視する輸出先については、「米国」との回答が最多(25.8%)で、ASEAN(21.4%)、中国(14.8%)との差が開いた。最重要輸出先に米国を選択した比率が高い業種は、飲食料品、自動車・同部品などだった。ASEANを選択した企業の割合は建設、通信/情報・ソフトウエアなどで高かった。
海外での事業拡大の意欲については、既に海外拠点を持つ企業で「さらに拡大を図る」と回答した企業は47.9%と、前年(47.4%)並み。海外拠点を持たない企業では、「新たに進出したい」とする企業が40.8%で、前年からやや上向いた。今後の事業拡大先では、米国(38.6%)の回答比率が最も高く、2番目の中国(24.9%)を大きく引き離して、首位を継続した(注2)。米国での新規拠点設立に意欲を示す企業は300社を超え、前年から100社以上増加した。大企業では、インド(33.7%)での事業拡大意欲が最大で、米国(32.2%)が続く。
中国ビジネスは自動車・同部品などで縮小検討する割合高し
対中ビジネス方針に関する設問では、中国で既存ビジネスの拡充や新規ビジネスを検討する企業は33.2%と、過去最低を記録した前年(33.9%)のほぼ横ばいだった。他方、縮小や撤退を検討する企業は1割未満、うち撤退の検討に限定するとわずか1%にとどまる。業種別では、化学で5割以上の企業が中国ビジネスを拡充する意向の一方、自動車・同部品などで縮小を検討する割合が高い。中国ビジネス縮小の理由(有効回答205社、複数回答)では、「地政学リスクの高まり(59.5%)」が最多だった。他方で、海外調達を行う企業の中で、最大の調達先(金額ベース)を「中国」とする企業は約5割(48.5%)を占め、調達先としての中国の重要性は変わっていない。
地政学リスクへの対応意識、分散・多元化の取り組み加速
最大の海外調達先からの主要原材料・部品の調達について、地政学リスクの高まりで「すでに調達に影響が生じている」と答えた企業は20.5%、「現在調達に影響はないが、今後の影響への懸念あり」と答えた企業は49.9%だった。業種別では、運輸で4割を超える企業が「すでに調達に影響が生じている」と回答し、全業種で最高となった。EUからの調達では、スエズ運河の通航制限による納期遅れの長期化や、米国からの調達では、トランプ新政権の「米国第一」による供給混乱への懸念の声が聞かれた。
主要原材料・部品の調達について、「すでに調達に影響が生じている」、または「現在調達に影響はないが、今後影響への懸念あり」と答えた企業のうち、約8割が影響を避けるための何らかの対策を実施(検討中を含む)している。対策として「調達先の分散・多元化」を行う企業が61.2%と最も高く、調達先の分散・多元化先については、83.7%が「海外」を選択した。
円安の進行が2024年度の業績に与える影響について、「全体としてマイナスの影響がある」と答えた企業は39.6%と、前年調査(43.4%)から3.8ポイント減少し、「全体としてプラスの影響がある」が19.8%で、2.8ポイント増加した。望ましい為替レートは120~124円とする回答が全体の19.3%と最も多く、前年調査からは横ばいだった。他方、130円以上を選択する企業の割合が前年より増加した。前年調査と比較すると、望ましい為替レートはより円安方向へ推移しており、長期化する円安への対応が進んでいると推測できる。
高度外国人材採用、人権デューディリジェンスの取り組み加速
回答企業のうち約半数が外国人材を雇用し、うち54.0%の企業で高度外国人材が活躍している。高度外国人材がもたらす成果として、68.4%の企業が「海外展開への貢献」と回答している。また、人権尊重の方針を策定している企業は38.9%で、前年から9.7ポイント増加した。大企業では約8割(76.0%)が方針策定済みだ。人権デューディリジェンスの実施割合も、回答企業全体で前年比6.5ポイント増の16.4%と、着実に取り組みが進展していることがわかった。
(注1)ジェトロ会員企業と、ジェトロサービスの利用実績のある日本企業(国内本社)、計9,441社を対象に実施。
(注2)「現在、海外に拠点があり、今後さらに拡大を図る」「現在、海外に拠点はないが、今後新たに進出したい」と回答した企業の合計を母数として、事業拡大先(最大3つ選択)にそれぞれの国を選択した企業の割合。
(板谷幸歩)
(世界)
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