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スタートアップ育成に向け「KL20アクションペーパー」始動、新規ビザ創設も(マレーシア)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月25日 0時35分

マレーシア政府は4月22日、ベンチャー振興フォーラムとしてクアラルンプール市で開催された「KL20サミット2024」(注)で、有望スタートアップやベンチャーキャピタル(VC)の育成を目的に、10億リンギ(約320億円、1リンギ=約32円)のベンチャー投資基金を立ち上げるとともに、「KL20アクションペーパー」に基づく各種支援策を発表した。2030年までに7億5,000万リンギのベンチャー投資を上積みし、スタートアップ2,500~3,000社を生み出したい考えだ。

複数のインセンティブ網羅した行動計画

経済省と科学技術・イノベーション省(MOSTI)、デジタル省が主導する「KL20アクションペーパー」によると、スタートアップ支援策は次のことを柱としている。

1. 「VCゴールデン・パス」:実績ある国外VCに対し、会社登録までの所用期間を6週間から2週間に短縮し、就労パスの取得支援も行う。マレーシア証券委員会が主導。
2. 「イノベーション・パス」:起業家やVC経営者などを対象に就労パス取得を優遇する。ビザを(A)創業者・起業家、(B)経営幹部、(C)高度人材、(D)一般人材(ハイテク企業やVCの現場技術者などを想定)に分類し、(A)~(C)には5年間、(D)には2年間の就労を認める。全分類でキャリアコンサルティングや生活関連支援を含む2週間の「配偶者プログラム」を提供するなど、帯同家族への支援も充実させる。
3. 「ユニコーン・ゴールデン・パス」:株式評価額の高い世界的スタートアップの進出を支援。法人所得税の減免、ビザ発行手数料免除、事務所スペースの貸与などを想定。
4. 「KL20GPU」スキーム:人工知能(AI)を用いるベンチャー企業に対し、データセンターの利用を仲介するほか、AI構築に用いる画像処理装置(GPU)の利用費用を補助する。
5. 「イノベーション・ベルト」:エコシステムプレーヤー間の知識共有や連携を促進するため、イノベーション関係機関をクラスター化。
6. 「シングルウインドー」:起業を政策面から支援するための単一窓口を設置。省庁向けの手続きを合理化するほか、資金調達を支援するためのデータベースを構築する。これらはMOSTIが所管する。チャン・リーカン科学技術・イノベーション相は過去に「シングルウインドーにより承認が迅速化し、起業はさらに容易になる」と強調しつつ、資金調達のしやすさ、規制上の障壁、優秀な人材獲得などの面でマレーシアには課題が残るとも指摘していた。「スタートアップ・エコシステムロードマップ(SUPER)2021~2030」を柱にエコシステム強化に向けた取り組みは進められつつあるが、マレーシアのユニコーンは中古車販売カーサム1社にとどまる(2024年3月4日地域・分析レポート参照)。

ラフィジ・ラムリ経済相は「今回の行動計画は単なる青写真ではなく、マレーシア進出での現実的な問題に対処する施策を盛り込んだ」とし、潜在力を持つスタートアップやトップ人材がマレーシアを進出先として選ぶことへの期待を示した。

(注)ラフィジ・ラムリ経済相によると、世界のスタートアップ・エコシステム・ランキングで、首都クアラルンプールは現在47位。政府は同市の2030年までのトップ20入りを目指す。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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