米ニュージャージー州、洋上風力発電からの電力購入契約に係る入札中止(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年2月5日 11時35分
米国ニュージャージー州は2月3日、予定していた洋上風力発電からの電力購入契約に関し、入札を停止すると発表した。同州は理由として、(1)今回の入札に残っていたアトランティック・ショアーズ洋上風力発電プロジェクト(2024年7月3日記事参照)で、主要な出資者だった英国石油大手シェルがプロジェクトから撤退したこと、(2)洋上風力発電に関する連邦政府の措置と許可に不確実性があることの2つを挙げ、このまま入札を進めることが責任ある決定ではないと判断したと述べている。
シェルは、競争の激化やプロジェクトの遅延、市場の変化など幾つかの理由が撤退につながったと説明しているが、トランプ政権下での洋上風力発電に関する規制の強化も大きく影響しているもようだ(AP通信1月31日)。ドナルド・トランプ大統領は1月20日の就任当日に「外洋大陸棚における洋上風力発電リースからの一時的な撤退と、連邦政府の風力発電プロジェクトに対するリースや許可慣行の見直しを指示する大統領令」を発出し、洋上風力発電のための鉱区リース新規契約・更新の凍結のみならず、既存の鉱区リースについても、終了・修正可能性を検討するよう指示している。
シェルと並ぶ主要出資者のフランス電力のグループ会社EDFリニューアブルズは、引き続きプロジェクトに取り組む姿勢を示しており、現時点ではプロジェクト自体が放棄されたわけではない。それでも、今回の電力購入契約の停止に加え、バイデン政権下で策定されたインフレ削減法(IRA)による支援もトランプ政権の見直し対象となっており、プロジェクトの採算性は着実に悪化している。
他方で、ニュージャージー州が掲げる、2035年までにクリーンエネルギーで電力を100%賄うという目標達成には、洋上風力発電は不可欠で、同州は2040年までに11ギガワット(GW)の発電容量を確保したい考えだ。このため、フィル・マーフィー知事(民主党)は声明で「洋上風力産業は現在大きな課題に直面しており、今こそ忍耐と慎重さが求められる時だ」と現状の厳しさに言及しつつも、洋上風力発電産業を引き続き重視していく姿勢を示している。
ニュージャージー州のみならず、ニューヨーク州やマサチューセッツ州など北東部では、脱炭素化に向けて洋上風力発電プロジェクトに期待する州が多い。規制面や財政面などで洋上風力プロジェクトに逆風が吹く中で、州の果たす役割は増大しており、今後これらの州政府がどのような対応をとっていくのか注目される。
(加藤翔一)
(米国)
この記事に関連するニュース
-
第二次トランプ政権下でのエネルギー転換政策:誤解と現実
Digital PR Platform / 2025年1月30日 13時41分
-
トランプ米大統領、アラスカの石油・ガス開発規制を全面緩和する大統領令に署名(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月22日 14時20分
-
トランプ米大統領、パリ協定からの離脱など定めた大統領令に署名(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月22日 13時30分
-
トランプ米大統領、エネルギー関係で5本の大統領令に署名、規制の見直し・緩和を推進(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月22日 13時15分
-
洋上風力関連株が軒並み下落、トランプ氏の土地貸与停止命令で
ロイター / 2025年1月22日 9時30分
ランキング
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください