米USTRタイ代表、301条関税引き上げの対象品目や時期の詳細は「翌週公示」(米国、中国、メキシコ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月16日 15時0分
米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は5月14日、1974年通商法301条に基づく対中追加関税(301条関税)の見直し結果についてプレスブリーフィングを行い、「具体的な関税対象品目、関税率、関税率の引き上げ時期、機械類に対する適用除外制度の詳細を翌週(5月19~25日)に公示する予定だ」と明らかにした。
ジョー・バイデン大統領は同日に、電気自動車(EV)や半導体など戦略分野で301条関税率を引き上げるようUSTRに指示した(2024年5月15日記事参照)。また、USTRは同日に301条関税の見直しに関する報告書を公表し(2024年5月16日記事参照)、現在301条関税の対象となっているそのほかの品目への追加関税を維持するほか、米国内での製造に使用される機械を対象とした適用除外制度に関する官報を翌週中に公示し、利害関係者からの意見を募るなどと明らかにしていた(注1)。
このほか、記者から「301条関税率の引き上げによって、中国との関係が競争から対立に陥ることはないと確信する理由は何か」と問われたのに対し、タイ代表は、301条関税率の引き上げが中国の不公正な慣行に対抗する戦略的な措置だと述べつつ、中国に対して「事態を激化させるための措置ではないことを明確にしてきた」と説明した。また、記者から「的を絞った戦略的な措置であれば、現在301条関税の対象となっているそのほかの品目の追加関税を維持するのはなぜか」と問われたのに対し、301条関税に中国の行動を変える効果があると指摘した上で、「いくつかの分野では、中国の知的財産の悪用や技術移転の強要は悪化している」と問題を指摘し、「関税負担を軽減する理由も正当化する理由もない」と述べた。
さらに、記者から「ドナルド・トランプ前大統領が中国製品への関税を引き上げた際、米国の消費者にとっては価格上昇につながった。同じことが繰り返されないと言えるのか」と問われたのに対し、「関税と価格との関連はほとんど否定されていると思う」と答えた(注2)。その上で、「バイデン大統領がわれわれに指示したのは、サプライチェーンをより強靭(きょうじん)にすることに重点を置くことだ」「米国内の製造能力を高める必要がある」と述べ、301条関税が中国の不公正な慣行の改善に加えて、サプライチェーン強靭化や国内製造業の増強につながるとの意義を強調した。
このほか、記者からメキシコに拠点を置く中国企業からのEV輸入や、中国の中間財を使用したメキシコや第三国を原産国とする製品の輸入に対する措置を講じる可能性について問われたのに対して、「それこそUSTRが懸念していることだ。中国からの輸入ではなく、メキシコからの輸入に対しては別の手段が必要だ」「この問題にどのように対処できるか、USTRはあらゆる手段を検討している」と述べた。
(注1)同報告書の付属書K(APPENDIX K)で適用除外を提案している機械類の312品目のリストが示されているほか、付属書L(APPENDIX L)で太陽電池製造装置類の19品目のリストが示されている。
(注2)米国国際貿易委員会(USITC)は2023年3月に公表した報告書(2023年3月20日記事参照)で、関税率引き上げ分を米国の輸入業者がほぼ全額負担したとしている。他方で、同日にUSTRが公表した301条の見直しに関する報告書では、追加コストを主に事業者が負担したため、最終消費者への影響は限定的だったとしている。
(葛西泰介)
(米国、中国、メキシコ)
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