USMCAパネルが米国の主張認める、メキシコの遺伝子組み換えトウモロコシ規制で(米国、メキシコ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月24日 13時15分
米国通商代表部(USTR)は12月20日、メキシコ政府が公布した遺伝子組み換えトウモロコシの使用を制限する政令に対する、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づく紛争解決パネルで、米国の主張が認められたと発表した。同パネルは2023年8月に米国の要請で設置されていた(2023年8月18日記事参照)。
今回のパネルは、遺伝子組み換えトウモロコシの使用に関するメキシコの政令のうち、生地やトルティーヤへの使用の即時禁止、メキシコ政府機関による食品用途と家畜飼料への使用の段階的な廃止に対して、米国がUSMCA第2章(内国民待遇と物品市場アクセス)と第9章(衛生・植物検疫措置)への違反を申し立てた案件だ。USTRによると、メキシコは米国にとって最大のトウモロコシの輸出国で、2024年1~10月に48億ドル相当を輸出した。その大半は家畜の飼料などに使われるイエローコーンとなる(米国通商専門誌「インサイドUSトレード」12月10日)。
パネルの最終報告書では、メキシコが関連する国際基準、ガイドライン、勧告、または人間や動物、植物の生命や健康に対するリスクの評価に基づいた措置を取っていないことや、(米国など)他の締約国の物品の輸入を禁止、または制限する措置を採用、または維持していることなどを指摘し、米国が申し立てた6件の衛生・植物検疫措置違反、1件の内国民待遇と物品市場アクセス違反を全て認めた。報告書には「パネルは、メキシコが同国の措置をUSMCAの第2章と第9章に基づく義務に適合させることを勧告する」と記載した。
USTRのキャサリン・タイ代表は「米国の農家や農業生産者が公正に競争し、気候変動への対応や生産性の向上にイノベーションを活用することを可能にする、科学に基づく通商政策の重要性を強調するものだ」と述べた。また、連邦議会下院で通商を所管する歳入委員会のジェイソン・スミス委員長(共和党、ミズーリ州)は20日、「トランプ(次期)政権と緊密に連携し、メキシコがUSMCAの規則に速やかに準拠しない場合は、大きな代償を支払うようにする」との声明を発表した。USMCAの規定により、メキシコは最終報告書が出された12月20日から45日以内にパネルの判断に従う必要がある。なお、メキシコはパネルの判断を尊重する意向を示している(「インサイドUSトレード」12月23日)。
今回のパネル判断はメキシコに是正を促すものだが、自動車の完成車の原産地規則の解釈を巡る2023年1月のパネル最終判断に対して、米国は「まだ合意に至っていない」として、従う姿勢をみせていない(2024年7月3日記事参照)。USMCAは2026年に見直しが予定されており(2024年6月28日記事参照)、米国は完成車の原産地規則の厳格化を望んでいると指摘されている(2024年12月12日付地域・分析レポート参照)。メキシコのみがパネル判断に従い、米国が従わない場合、メキシコからの反発も想定される。こうした両国の姿勢の違いがどのようにUSMCA見直しに影響するのか、今後の動向が注目される。
(赤平大寿)
(米国、メキシコ)
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