GCC諸国への地域紛争の影響は限定的だが中期的なリスクも、IMF予測(中東、湾岸協力会議(GCC)、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、オマーン、クウェート、バーレーン)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月26日 0時40分
IMFは12月19日、湾岸協力会議(GCC)諸国の経済見通しを発表し、GCC諸国への昨今の中東地域での紛争の影響は限定的で、経済見通しは引き続き良好と報告した。石油の減産緩和と天然ガスの拡大による炭化水素部門の回復に加え、非炭化水素部門の拡大も続くとした。IMFは、地政学的分断と気候変動が進む中で、民間部門の強化と経済の多角化継続を政策の優先事項にする必要性を強調した。
2024年のGCC諸国の実質GDP成長率の平均は1.4%で、2023年の0.8%から0.6ポイント上昇するとした(添付資料表参照)。特にアラブ首長国連邦(UAE)が4.0%、バーレーンが3.0%と高い見込みだ。GCC諸国の平均として2025年に3.5%、2026年に4.2%の成長を見込む。IMFは、紅海情勢の緊張によるGCC諸国経済への影響は現状軽微で、貿易、投資、観光、金融にほとんど影響がなく、GCC諸国の主要港からの輸出量も回復していると報告した。また、航空便の発着数も堅調で、特にカタールやサウジアラビアで記録的な水準に達している。
中期的なリスクは地政学的分断、エネルギー転換、生産性拡大
一方でIMFは、中期的なリスクとして、地政学的分断、エネルギー転換、生産性拡大を挙げた。詳細は次のとおり。
地政学的分断:ロシアのウクライナ侵攻(と関連する制裁)やイスラエルとハマスの衝突、貿易制限の強化により、エネルギー価格の上昇などの恩恵を受ける可能性があるものの、世界経済の低迷と生産量減少の影響を受ける可能性もある。
エネルギー転換:供給(炭化水素生産部門への投資不足など)と需要(低炭素消費への移行など)の相対的なバランス次第で、エネルギー価格が上昇または下落する可能性があり、対外および財政収支、金融安定性、経済成長に重要な影響を及ぼす。
生産性拡大:人工知能(AI)主導の成長は、成長を後押しする可能性がある一方、国民間の格差やサイバーセキュリティーのリスクの出現や激化をもたらす可能性がある。
なお、2024年12月1日には、世界銀行もGCC地域経済に関する発表を行っており、2024年は1.6%と低調も、2025~2026年には4.2%の成長率を見込むと予測している。
(加藤皓人)
(中東、湾岸協力会議(GCC)、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、オマーン、クウェート、バーレーン)
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